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親友とその父⑥
少しして夕飯が食卓に並んで、私もご馳走になる。スパイシーな香り漂うカレーうどんとスーパーのいなり寿司だけど可愛く皿に盛り付けられて出された。
「こんなテキトーなものでごめんね。」
「いえ、急にご馳走になって申し訳ないです。いただきます。」
「いただきまーす。」
「いただきます。」
こういう仕草で、茉莉は血は繋がってないけど智裕さんに似たんだなぁと思う。パパさんのお淑やかさと上品さは黙って立っている時にしか反映されてない。
「ほんと、茉莉はパパさんに似てなさすぎ。」
「え?なにそれ、聞き捨てならないんだけど?」
「そうやってすぐムキになったり、乱暴な言葉だったり、忙 しないところとかよ。」
「なによー、私だって大人しいときは大人しいわよ。」
「パパさん、この子の性格って絶対智裕さんに似ましたよね。」
私がそう言うと、向かい側に座っているパパさんは柔らかに笑った。本当に幸せそうに。
「嬉しいな、のんちゃんにそう言われるの。」
「いや、少し嘆いた方がいいですって。こんなじゃじゃ馬になっちゃって。」
「和!パパが褒めてくれてんだから私はこれでいーの!」
「いいんですか?」
呆れたように質問すると、パパさんは穏やかに話した。
「まーちゃんは智裕くんとは血の繋がりもなくて戸籍も他人…それでもまーちゃんを一生懸命、一緒に育ててくれたのは智裕くんだから、まーちゃんが智裕くんに似てくれることは智裕くんがまーちゃんを慈しんでくれたって証になる気がして、俺は嬉しいよ。」
この人、本当にどこまで美しいんだろうか。
私の隣にいる娘はその言葉に胸打たれ「尊い」と目を輝かせているし。
「それに、まーちゃんと智裕くんと一緒にいるのとっても楽しいからね。のんちゃんもまーちゃんに飽きないでしょ?」
「……飽きませんねぇ。」
「ちょっと、和は馬鹿にしてるわよね⁉︎」
「さぁ?」
茉莉は両親がどちらも男という特殊な家庭環境だったから、後ろ指をさされてことは何度もあった。だから茉莉は強くなった、精神的にも物理的にも。
きっと強くなれたのは、この美しい父親の、優しさがあったからだろうな。
私は改めて、このパパさんの偉大さを感じたのであった。
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