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とりあえず四階まで階段を上ってみる。
薄暗い廊下は夏の日差しが既に館の屋根を超えて西側へと傾いているのを訴えていた。
一部屋一部屋のドアに顔を近づけて中の様子を探る。
奥に行くにつれてピアノの音は大きくなるもののどこか霞がかかったような音だった。
それにどのドアの向こうからもそれらしいはっきりした音は聞こえなかった。
ということは三階かと今度はゆっくり階段を降りる。
さっきの階よりピアノの音が少しだけ大きく聞こえた。
はっきりと音がわかるようになったピアノの曲は今まで聞いたことのない曲だった。
低く太く響く旋律の上を、高く細い無数の旋律が走る。
さっき森を走り抜けてきた自分たちみたい。
プティはそんなことを思いながら、焦燥感を煽られるようなその曲に無意識にノワールの革のベルトをぎゅっと握りしめていた。
奥に行くに従ってピアノの音は大きくなる。ついに一番奥のドアへたどり着いた。ここはほかの部屋と比べてドアから廊下の突き当たりまでの距離が長い。
つまりこの階で一番大きい部屋ということだ。いつの間にか一番前にいたルグリが色あせた金色のドアノブをつかむ。手汗で若干滑るのを持ち直しながらゆっくりとドアを開ける。
そこには
夏の夕暮れに佇む見たこともないピアノ
その美しい景色に見合わぬ低くおどろおどろしい曲が部屋いっぱいに溢れかえっていた。
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