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人はそれを邂逅と呼ぶ
*
不意に音が止まった。ルグリとノワールはそう感じたがプティとネージュは違った。
音が止まったのではない、曲が終わったのだ。
「あなた達は誰ですか?どうしてここにいるのですか?ここに入ってはいけません。」
ピアノを弾いていた天使がいやにしゃちこばった言葉で喋った。
その声は思っていたよりも低い、青年と少年の狭間の声だった。
「え、ぁ、その」
「ゴメンなさい。私達森で迷ってしまって、街までの道を聞きたくて入ったんです。」
ネージュがサラリと嘘をつく。すると彼は一瞬きょとんとして、ハッとしたように頷いた。
「道に迷ったのですね。ここから街までそんなに遠くはありません。家のものに送らせましょう。」
「ここ、使用人とかいたのか。一人暮らしかと思ったぜ…。」
「はい、メイドと家令が1人居ます。彼らはとても優秀ですから、あなた達を問題なく家まで遅れるでしょう。」
そう言うと、家主はドアの近くにあったルームベルをチリンチリンと鳴らした。
『お呼びです…か?!桜様、この子達は一体?!』
『知らん。道に迷ってここへ入ってきたらしい。暗くなってから捜索隊に森に入られるのもうるさくて面倒だ。丁重につまみ出せ。』
聞いたことのない異国語で話す2人に四人は呆然とした。
しかし、なんとなく言っていることはわかる。
屋敷への侵入者の訪れに対する驚きと、特に問題ないから送り届けてやれというやり取りだろう。
四人はメイドに促されて玄関まで戻り、屋敷をあとにした。
もちろん帰った四人がこっぴどく叱られたのは言うまでもなく、ノワールの頭には大きなたんこぶができた挙句、深夜とも呼べる早朝からの仕込みを手伝わされたのは、また別の話。
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