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街のはずれの緑の館には、一人の青年が住んでいる。
極東の島国からやってきた彼は、この館にひきこもり日夜趣味に没頭していた。
時には、曽祖父から譲り受けた画材で油絵を描き
またある時には部屋を埋め尽くす書棚の本を読みふけり
また別の時は、読んだ本から浮かんだ景色を音符におこして
見たままのものを、頭に浮かんだ美しいものを木に彫り、石に彫り
そしてそれは、各業界の人間にそこそこ認められた。
彼は、頼まれて作品を作ることは無かった。ただ自分の気の赴くままにつくり、描き、奏でた。
それに値がつくのは彼として都合がよかった。
作ったものに愛着がわかない訳では無い。
しかし気に入ったものは目で、耳で、指で、頭の中に入っているから手放してもおしくはない。
それに、芸術には金がいる。
背に腹は…というか全く痛くはないのだが、整理するのも管理をするも面倒だからこれから続けるために消費してしまおう。
というのが彼の考えだった。
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