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第13話(リデル目線)
唇を離し、ジェームズの顔を覗き込む。そして微笑んだ。
「後で治療がてら『火傷治し』の魔法を教えてあげるよ。ジェームズは火傷が多すぎる」
「えっ……?」
ジェームズが額に手を当てる。彼からは見えないだろうが、そこにはリデルの左手の甲に刻まれている紋様と同じものが刻まれていた。
「あーん! ジェームズばっかりずるい~! 先生、アビーにもちゅーしてー!」
裾を引っ張って催促してくるので、リデルは人差し指を唇に当てた。
「そうだね。アビーがもっと大きくなったら、ジェームズと同じことしてあげる」
「えー? 今すぐがいいー!」
「わがまま言うな、アビー。俺が何年お預け食らったと思ってんだ」
「ジェームズが魔法の才能ないだけじゃないの?」
「失礼な! そんなことねぇわ!」
そう怒りながらも、ジェームズはどこか幸せそうだった。
「……にしても、これからどうします? 家は全部焼けちゃったし」
「まあ、それはどうにかなるでしょう。とりあえず、片付けを手伝ってくれるかな。落とし穴にゴミを全部埋めて行かないとね」
「先生、アビーも落とし穴作っていい?」
「ふふ、いいよ。今日だけは特別だ」
「やったー!」
大喜びで地面に手をつき、「えいっ!」と声を上げるアビー。
すると、木材の下の地面が崩れ、積み上がっていたものがガラガラと巨大な穴に落ちて行った。直径三十メートル、深さは十メートル以上あるだろうか。子供らしいというかなんというか、手加減なしの落とし穴作りだ。
仕上げに魔法で地面を流動させて穴を塞いだ。
何事もなかったかのような更地が出来上がったところで、リデルは外出用のトランクを掴んだ。
「さて、では出掛けようか」
「あれ? ここに家を建て直すんじゃないんスか?」
「いやいや、そんな。また火をつけられたら大変じゃないか。ここよりも、もっといい場所があるよ」
「まあ、それもそうっすね」
ジェームズもアビーを片手に抱き上げる。
「先生、お出掛けするの?」
「そうだね。どこか遠くへお出掛けしよう」
「わーい! じゃあアビー、海が見える町に行きたい!」
「海か……。それもたまには悪くないかな」
三人一緒なら、きっとこの旅も楽しいものになる。
珍しく楽天的な気分を味わいながら、リデルは沈んでいく夕陽を眺めた。
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