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第1話

熱帯夜が続き、日中は最高気温を更新中。 ……もうすぐ時間か。 ソワソワしながら時計を見る。 週末、久しぶりに会う恋人の為にせっせと手料理をこしらえる。 瑛人は料理を一口も食べず口を開いた。 「(あゆむ)さん。別れて欲しい。 他に好きな子が出来たんだ。」 突然の言葉に耳を疑う。 好きな人……? どう……して……? なんで 「歩さんは一人でも大丈夫でしょ……」 大丈夫じゃない。 俺、お前がいないと…… 嫌だ。 別れたくない。 こんな突然…… 俺のどこがダメだった? 言ってくれたら直すから。 「そうか。分かった。」 出てきたのは、そんな阿呆みたいな言葉だけだった。 「それじゃ……」 瑛人は立ち上がって背を向ける。 『行かないで。』 そう言いたいのに声が出なかった。 バタン ドアが閉まり、ただ呆然とした。 テーブルの上には食べてもらえなかったエビフライとハンバーグ。 思ってる事は何一つ言えずに、呆気なく幕を閉じる。 ポタ…… 床が濡れてて自分が泣いてる事に気付く。 「呆気な……」 止まらない涙を袖で拭いタバコに火を付け、ため息を吐き出した。 『好きだよ。歩さん。』 優しい瑛人の声。 目を閉じれば昨日の事みたいに思い出す。 付き合えたのはたった半年。 俺の告白から始まった。

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