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 岡嶋から僕のケイタイにメッセージが届いたのは翌日の深夜だった。  羽田13日17時10分発――そして、よろしくと文字が入った無駄にかわいい猫のスタンプ。岡嶋は、この薄い長方形の小さな端末の向こうで、約束(と云っても一方的なものだったが)した夜の去り際に僕に見せた笑顔と同じような表情(かお)をしているのだろうか。  枕元にケイタイの画面を伏せて置き、僕は目を閉じた。  満天の星空。青く光輝く海。ゆりかごを揺らすような優しい波の音が、大きく小さく、聞こえる。  隣で一緒に景色を眺めていた彼が云い、僕は恥ずかしかったから小さく頷いた。  互いの息が触れ、唇が触れ合う。  新着メッセージの通知音で目を開く。鼓動が早く、軽い吐き気がした。  ケイタイの画面を見ると、目を閉じてからそれ程時間は経っていなかった。メッセージの送り主は、岡嶋。  返事は?  それだけだった。  僕がこまめに返信するタイプではないとわかっているだろうに、きっと、最終確認のつもりだろう。予約が取れたら行くと云った以上、嘘にしないことも、わかっているだろうに。  おやすみ。  送信し、枕に顔を突っ伏す。すぐに通知音が鳴った。  俺の夢見るなよ。  続けて下にメッセージがぽんと出る。  嘘。  俺の夢見ていいよ。  おやすみ。いい俺の夢見ろよ。 「ばかだろ」  ケイタイを放り投げ、眠りに就く。ふざけたメッセージの所為だ。夜の浜辺でキスをした相手が、岡嶋に変わっていた。最悪の夢だった。

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