3 / 17

3

 宮川って、クラスの中でもちょっと浮いていた。  こんなド田舎で芸能人みたいな容姿をして目立っていたし、当然女子から毎日のようにアピールさるのに全スルー。そして誰ともつるまないし、会話も最低限の事務的なこと以外で発したのを見たことがない。  何よりも彼を浮かせているのは、根も葉も無く飛び交っている噂だった。 「宮川って(っち)、ホモなんだって(やって)。」  俺もその噂を少しばかり鵜呑みにして彼を敬遠していた。  だからこんな半径1mの距離で宮川の顔を見たのは初めてだった。  宮川は俺の顔の横にスッと手を伸ばした。左側のイヤホンが宮川に取られた。 「さっき()曲、何()曲?」  まだ涙のアトが見える。こうして俺に質問するのは、涙に触れさせないようにする為だったりするのだろうか。 「(なん)って……藍坊主っ()バンド()曲。」 「穴井、好きな()?」 「まぁ…今ハマってる(ちょる)、けど。」 「……CD貸してくれ()?」 「別()いい(ばい)……。」 「じゃあ明日、ここで。」  意味がわからない。 「いや、学校でいいじゃん(やん)。」 「学校は無理。また明日、ここに来るから(けん)。」  本当に意味がわからない。驚いている俺を愉快そうに微笑んで見る宮川がムカついた。  サワサワと夜風、リンリンと虫の声、キラキラと星と、宮川の綺麗な顔。  まさかこんな光景がずっと心の底に溜まって残るなんてこの時は思わなかった。

ともだちにシェアしよう!