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「有難う。」と宮川は笑ってCDを受け取った。そして返却もまた同じように此処でと約束を取り付けた。
「何で学校じゃ 駄目なの ?」
態々、夜中にこんな山奥に来るのは手間だろうにという気遣い半分。
俺の領域に入って来るなという警告半分。
宮川の表情は一瞬曇って、苦しそうに笑った。
「付き合ってる 人がい る から 。」
「それは地理の五島?」って言葉が喉をつっかえた。好奇心だけなら訊 いてしまえば良かったのに。
肯定されたら、俺の心臓がどうかしてしまう気がしたから。
「此処って 穴井の とっておきだっ た?」
申し訳なさそうに宮川は訊く。俺が「うん。」と頷くと「ごめん。」と謝った。
「俺も見つけたから 、これからも来ていい?」
宮川の顔が苦しそうだったから、俺は断れなかった。
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