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どうしてだろうか。
俺は10cmくらい背の高い宮川を包み込んであげたくなっていた。
「……宮川、は…何 も悪くねぇし。」
それは、この熱帯夜の仕業だと。
俺は未だに言い訳にしている。
宮川の涙は、また夜空の下で輝いていて、とても綺麗だった。
「宮川を捨てた奴の 為に宮川が泣くの は変だ と 思う。」
どうすれば、宮川が笑っていてくれるのか、わからない。
だから、直接、言葉にするしかなかった。
「宮川の こと あんま知らない けど、俺は宮川にちゃんと笑って欲しい、って 思う。」
俺が懸命にそう言えば、宮川は口元で微笑んだ。
「今日は何の曲聞いて た の ?」
俺はその問いに、また律儀に答えた。
「ELLEGARDEN って バンド。」
「また今度、貸して。」
俺が宮川にそのCDを渡すことはなかった。
貸した藍坊主のアルバムは、宮川に貸したまま。
宮川があの場所にいたことは、夢なんじゃないかって思うときもあるけど、夏が来る度にリアルに蘇る全ての感触で、本当だったんだと。
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