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俺も27歳になった。
宮川を傷付けた大人と同じ年齢になった。毎年夏には実家に帰る。
この歳になると結婚の催促が多くなる。相手もいないのにどうしろと。
「貴方 はいつまでフラフラするつもりよ 。中学の 時クラスが一緒だ った原田さんって 女の子いた で しょ 、もう子供が2人もい る の よー。」
「はいはいはい、分かりました、すいませんねぇ。」
「ゴロゴロしてい るんだ ったら、下の 薬局行ってカレー粉買っ て来なさい!」
俺は母に蹴飛ばされて、500円玉だけを渡され、追い出された。
この田舎は夏は地獄のような暑さだ。こんな中、俺はよく18年もずっと暮らしていたなぁと自分で自分を感心してしまう。それくらいの暑さだった。
坂を下って、ドラッグストアに向かう道中、陽炎越しから多くの人の列が近づいてくる。
ゆらゆら、白いシャツと黒のスラックス、白いセーラー服と紺のプリーツスカート。
あの制服は俺が10年前に着ていたものと同じ。
夏休みだというのに、なぜ、高校生が制服を着て遠足のように並んで歩いているのだろう。
すれ違ったその集団、男子生徒は俯いて、女子生徒は泣いていた。
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