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 家に着くと俺は久しぶりに新聞を拡げた。  テレビ欄、社会経済、地域情報、事件、何枚も(めく)って見つけた市内情報欄。下の方に書かれている「おくやみ」のコーナー。 ▼五島汰一(ごしま-たいち)さん 享年37 XX町X-XX-X 8月9日逝去 死因は交通事故 通夜は12日告別式は13日 会場はXXXセレモニーホール 喪主は妻・梨奈(りな)さん 「その人、あんたが()()(よっ)()高校()先生らしいけど、()()(ちょ)()?」  横から記事を見た母に訊ねられ、俺は「知らない」と嘘をついた。本当は忘れたかった、が正しい。  あの人は汚い大人だった。  宮川が泣いていた。詳細は知らないけど、思い出すのは辛そうに笑う宮川。  夕飯を食べた後、俺は一服するために外に出た。家の中は禁煙だから仕方がない。  スゥと煙を吸いながら天を仰ぐと、快晴だった空に相応しい、眩しい夜空だった。月も明るい。  熱帯夜の生温い夜風が頬を掠める。何故だか胸はざわついて泣きそうになる。 「あ、藍坊主()アルバム、借りパクされてる(ちょった)まま()し。」  返してもらわないと。

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