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天宮くんの懇意の相手が、優等生の鎌頼 八辻 という厄介者だという事分かった。あの鼻持ち高い優等生野郎に、天宮くんの趣向など理解できないだろう。女すら抱いたことのないような堅物漢はきっと、天宮くんの色香に耐えきれなくなった、謂わば害虫にしか過ぎない。
害虫に与える花などないが、一筋縄ではいかないのは間違いない。それならば――
僕は思わず口元を歪め、悪魔のような笑みが零す。いっその事、共犯者にしてしまえばいいだけなのだ。
新たな遊戯を思いついた僕は興奮で居ても立ってもいられず、準備に取り掛かろうと立ち上がる。襖を再び開け、周囲を注意深く観察してから外に出た。
ちょっとばかし手間がかかるが、僕は生憎人生というものに暇を持て余しているのだ。最高の遊戯を失う代償に比べたら、ちょっとした苦労など構いやしない。
天宮くんの猥 りがましい姿を思い浮かべつつ、僕は弾むような心持ちで下宿を後にした。
数日の間。僕は天宮くんに遊戯は当面の間は取りやめるという話をし、安堵の表情を浮かべ「そうですか」と努めて平然と言う天宮くんをほくそ笑みながら、着々と準備を進めていく。
決行の当日、僕は白昼から天宮くんの部屋を訪ねた。一緒に来て欲しい場所があると伝え、訝しげな表情を浮かべる天宮くんを連れ出す。
町外れの古びた屋敷の脇にある蔵の前に立つと、流石に天宮くんが不安げな表情を浮かべた。
「何をする気なのですか?」
借りてきた鍵で錠を外す僕に、天宮くんが声をかけてくる。怯え混じりのその様子に、僕は苦笑いを禁じ得ない。
「案ずることはない。別に君を此処に閉じ込めようなどと考えちゃいないのだから。安心し給え」
錠を外し扉を開けると、僕は天宮くんを促すように「さぁ、入り給え」と背中を押す。
外からの光しかない闇の蠢く蔵の中へ、天宮くんは恐る恐るといったように足を踏み入れていく。
この蔵は今は使われていない屋敷の主人の物で、僕が頼み込んで譲ってもらったのだ。此処数日の間に僕は苦心に苦心を重ね、どうにかこうにか理想の形を作り上げた。
蔵の中には燭台を数本。寝台、テーブルに椅子が備え付けてあり、一種の部屋のようなものになっている。
「何故、蔵にこんな物が……」
天宮くんは呆気に取られ、周囲を忙しなく見回していた。
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