5 / 9

5

「怯えているのかい? 確かに無理はないね」  僕は頬に手をやり、今度はゆっくりと唇を重ねていく。唇を噛み締めていたせいか、ほんのりと鉄のような味が口の中に広がる。  緊張を解きほぐすように天宮くんの唇を宥めるように舌を這わせ、滑らかな脇腹を擦る。 「ふっ……はぁっ……」  微かに溢れる吐息を奪うように舌を差入れ、指先で天宮くんの胸の突起を優しく撫でる。 「んぅ……っ……」  天宮くんの体が小さく跳ね上がる。僕は舌を滑らせ首筋から鎖骨にかけて所有物の証をつけ、辿り着いた胸の突起にしゃぶりつく。 「あっ、あっ、い、いやぁ……」  天宮くんは嬌声を上げながら身を捩ろうとするも、両腕を縛られていては思うように身動きが取れないようだった。 「そんなに暴れると、手首に濃く痕が残ってしまうよ」  僕は顔を上げて囁くと、天宮くんは荒い息遣いで「でも……」と言葉を零す。 「でもなんだい? もうこんなに昂ぶらせて、糸まで引いているじゃないか。さっきまで、あんなに隠れていたのに」  天宮くんの雄はすっかり隆起し、先端をヒク付かせていた。指先で撫でれば透明の液体が蜘蛛の糸の如く、細い糸を作る。 「あっ……」 「こっちも、いつものように縛ってあげよう」  僕は懐から麻紐を取り出し、すっかり濡れている雄の根本を縛り上げる。 「ああああっ――」  少し強かったのか、天宮くんが背を反らせ藻掻く。それでも雄は一向に衰える様子もなく、それどころか興奮を示すかの如く、赤みが増していた。 「最近は一人での遊戯は、していなかったのかい?」  ヒクヒクと震える雄を優しく擦りながら問いかける。 「はぁ、あっ……し、してないっ……です」  震える声音で否定を述べると唇の端から唾液を零し、荒い息遣いで胸を上下させている。 「なるほど。だからこんなにも、歓喜しているのだね。君の体は実に素直だ」 「あっ……ち、ちがいます……」 「天宮くんも見習って、少しは口述も素直になり給え」  呆れたように僕が言葉を吐き出すと、背後から光が差し込み外からの空気が蝋燭の火を揺らす。  来客に気づいた僕は顔だけ振り返ると唇に人差し指を当て、立ち尽くす間抜け面の男を牽制する。  牽制の必要はなかったのか、異様な物でも見たという顔で鎌頼(かまらい)が呆然として微動だにしない。  僕は寝台から降りると、蔵の入口に近づく。立ち尽くす鎌頼の背を押し、蔵の扉を静かに閉める。再び闇が覆いかぶさり、淡い蝋燭の火が幻惑的な雰囲気を醸し出す。 「お、おいっ……これは一体……」  鎌頼が口を開いた事で、天宮くんが「えっ……」と声を上げた。馬鹿な男のせいで早々にして天宮くんに気づかれてしまい、僕は失望の念にかられ呆れた視線を鎌頼に向ける。

ともだちにシェアしよう!