3 / 11

是正滅法・わ

  ◇わかよたれそつねならむ◇ 僕こと、早瀬鳴海は今日もねちっこいひとつ年上のセンパイに絡まれている。 「あの、センパイ?」 「ん?」 「退いてくれませんか?」 壁ドンならぬ、股ドンで進行を妨げられている僕は冷ややかにそういい放つ。 「鳴海くん、そうつれないことをいわないでくれない?」 僕の顎を持ちあげてそう返してくるセンパイこと、結城颯伽は僕の唇にキスをしようと顔を近づけていた。だけど、あともう少し早かったら僕の唇に触れられていただろうけど、彼はとても運が悪かった。 「はーい、結城くん、通行の邪魔ですよ。ソレと、勝手に人のモノに唾をつけないようにしてくれませんか?」 ガツンと平手チョップをもろに受けるセンパイは、高坂隼斗というもうひとりのねちっこい彼を睨んでいた。そんな高坂さんはセンパイよりひとつ年上である。 「ああ、コレは高坂さん、ごきげんよう。相も変わらず、ぶしつけですね。しかし、愛しの姫君が目の前にいて、口説かないっていうのもどうかと思います」 真顔でそう返すのだけど、愛しの姫君という言葉と発想は遺憾だと思った僕は眉根を潜めさせていた。だけど、そう思っているのは高坂さんも同じだったようで物凄く呆れた顔をする。 「あの、結城くん、み境なしに盛っているようにしかみえないのは私の気のせいですか?ソレに、なるもそう簡単にキスを奪われるようなことはしないでください」 いちおう、私たちはつき合っているのですからというけど、僕は高坂さんから告白した返事をまだちゃんと返してはいなかった。 ソレは、入学をしてから直ぐのことだった。校舎裏にある校庭に呼びだされた僕は、入学式のときに歓迎の挨拶をしていた在校生代表の高坂さんから告白を受けていた。 『好きです。私とつき合ってください』 そして、紅濁した顔でそういってきた高坂さんは僕の返事が解っているみたいで、そういったあとこうもつけ足したのだ。 『返事はお試し期間を経てからにして貰ってもいいですか?』 と。当然、僕は断る前提でいたから、返した言葉は『さぁ、どうでしょう?』という疑問形だった。だけど、ソレを良しと取ってしまった高坂さんはソレから僕とつき合っていると思っているらしいのだ。 そんな高坂さんの勘違いを僕はそうそうと打破したいのだけど、つき合っていませんよといったところで彼もセンパイとそっくりでねちっこい性格だから、まったく僕の話を聞き入れてくれないのは間違いないだろう。ソレに、もし聞き入れてくれたとしても、そう簡単には解放してくれないと思うのだ。いろいろと僕を丸め込んで、手離さないのが彼のやり方だから。 だから、僕は高坂さんに「解りました。次からは気をつけます」と素直に応じてから、センパイの方には「そういうことなので、こんご、僕には構わないでくださいね」とうんざりとした顔でやんわりと牽制する。  

ともだちにシェアしよう!