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第6話
◇◇
ようやく臼田の行きたい所を一通り回り終えた時には、身も心も疲れ果てて、くたくたになっていた。対して、ヨーヨーやらお菓子やらを手にぶら下げた臼田は、ご機嫌らしく、鼻唄なんかを歌っている。
思わず、唇から溜息が零れた。
「…それで、満足したのか?」
そう聞いてみれば、臼田は笑みを浮かべて、こくりと頷く。
「うん。行きたい所は、全部回れたから。……あ、でも」
まだ何かあるのか、と少しうんざりしながら隣を見れば、臼田は夜空を仰いで、ぽつりと呟く。
「……花火、見たかったな」
「…花火?」
「…うん。大きくて、綺麗な花火」
夜空を見上げる臼田の瞳が、切なげに揺れる。
出来ることなら叶えてあげたいけれど、でもこの町で毎年行わている花火大会は、まだ一週間以上先だろうし。
どうしようかと頭を巡らせて、…はと閃く。
「あー……家、くる?」
「え…」
「大きいのは無理だけど、小さい花火なら出来ると思う」
打ち上げ花火のような、豪勢なものではないけれど。コンビニとかで買えるような小さな花火なら、今の時期であればもう売っているはずだ。
ぱ、と臼田の顔が華やぐ。
「…いいの?」
「いいよ。丁度、父さん達いないし」
「本当?…嬉しい…」
臼田の瞳が、きらきらと輝く。
頰がふわりと赤くなって、唇の端がきゅっと吊り上がる。
「…ありがとう、秋鷹」
ーーどうやら自分は、臼田のこの表情に弱いみたいだ。
妙にどきどきする心臓を抑え、火照った顔がばれないように、俺はそっと臼田から顔を背けた。
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