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盲目の白い花 2

その日は、何だか朝から騒がしかった。 外から色々な人の声がして、何かあったのかと壁伝いに部屋を出てみる。 すると、聞き慣れた足音が耳に入り、声を掛けた。 「シスター。おはようございます」 「レリス、おはよう。どうかしたの?」 小さい頃から僕の世話をしてくれたシスターリアラ。 彼女なら何か知っているかも…。 「あの、朝から皆バタバタしているので。何かあったのかと」 「あぁ、その事ね…実は…その、信じ難いのだけれど、騎士団が竜を捕獲してきたらしいの」 「りゅ、竜を?」 「えぇ…私もまさかと思ったのだけれど…大通りを運ばれて行くのを見て来た子達が本物だったと騒いでいて…」 竜…それは、この国で決して手を出してはいけないと言われている生き物だ。 人間の前に姿を現す事は滅多になく、空を飛んでいるのを見るだけでも奇跡的だと言われている。 何故手を出してはいけないのか…答えは簡単で、人間が太刀打ち出来るような相手ではないからだ。 大きな身体に鋭い爪。口からは炎を吐くことが出来ると言う。さらには翼を持ち、空まで飛べる。鱗に覆われた体はどんなに鋭い刃物でも傷を付けることは出来ないのだとか…。 何百年も昔のこの国の王は、愚かにも竜が住むと言われる場所へ攻め入り、怒り狂った一匹の竜に国を半壊にされたという伝説まで残っている。 そんな竜が…捕獲された? 「あ!レリス!!ねぇねぇ、凄いんだよ!!」 複数の足音と共に、子供達が僕の周りに集まって来たのがわかる。 皆興奮している様で、いつもより声も大きく、伝説だと思っていた存在を目の当たりに出来たことに感激しているのだろうと容易にわかる。 「竜は本当にいたんだよ!!」 「真っ黒な竜でねっ、すっごく大きかったよ!!」 「騎士様が捕まえたんだ!やっぱり騎士様かっこいい!!」 「わ、わかりましたから、少し落ち着いてください」 僕の両手を握ってぴょんぴょんと飛び跳ねる子供達を何とか落ち着けようと声を掛けるも、興奮は冷めることがない。 それほどに衝撃的な出来事なのは理解出来るが僕は見ることが出来ないのでいまいち実感がわかない。 「…シスター、本当に…本物の竜なのでしょうか?」 「分からないけれど、既に話は広まっていて、外は大騒ぎよ。本物か否か…きっとすぐに城から何か報せがあるでしょう」 「そう、ですね…」 竜が捕えられた。 その事が、何故か胸の中をザワザワと不思議な感覚にさせる。 どうしてだろう… 「レリス、大丈夫?」 先程まであんなにはしゃいでいた子供たちが喋らなくなった僕を心配してか静かになったのに気付き、僕はその優しさが擽ったくて思わずクスッと笑ってしまう。 「大丈夫ですよ。さ、朝ごはんがまだでしょう?食べたら竜の話を聞かせてください、ね?」 「うん!」 「レリス、私が連れてってあげる!」 「ずるい!僕も!」 僕の両手を子供たちが小さな手で引いてくれる。 賑やかな声に囲まれ、僕は胸のざわつきを忘れようと子供たちの声に集中した…。

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