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盲目の白い花 3
竜が捕えられてから数日が過ぎた頃、城からの報せで捕えられた竜が本物であること、それから、竜の世話係を募集することが伝えられた。
竜に興味のある人や、莫大な金額の報酬目当てに多くの人が世話係に立候補したけれど、どの人も3日と続かなかったそうだ。
「竜のお世話係まだ探してるの?」
いつも通りの昼下がり。
僕の部屋に数人の子供たちが遊びに来て話をしている内に話題は竜の話になっていた。
「そうらしいですね。報酬の金額もどんどん上がってますし…城の人も焦っているように感じます」
「なんで焦ってるの?」
「あくまでも僕の予想ですけど…おそらく竜は衰弱しているのだと思います。せっかく捕らえた竜が死んでしまっては意味が無い。だからこそ竜を回復させることが出来る世話係を確保したいのではないかと」
「難しくてよくわかんない!」
「えーと…竜は弱っていて、元気がないんです。だから、竜を元気にしてあげられる人が早く欲しくて焦ってるんですよ。このままだと竜は死んでしまうかもしれませんから」
僕の言葉に子供達は驚き、悲しそうな声を出す。
「竜…死んじゃうの?」
「すぐに、ということはありませんけど、このまま元気にならなかったらもしかしたら…」
中途半端に嘘をついてもきっとバレてしまうだろうから、僕は正直に伝える。
竜は恐ろしい存在と言われているけれど、伝説的存在にやはり憧れる部分もあるのだろう。
もし、本当にこのまま竜が死んでしまったら、この子達はきっと心の底から悲しむだろう。
……僕も、死んで欲しくない、と思う。
「私がお世話係になれないかなぁ。そしたら元気になれるように沢山お花あげるのに」
「僕はねぇ、シチューあげる!美味しいもの食べたら元気になるよ!」
「そうですね、皆がお世話をしてあげられたら竜も元気になるかもしれません。でも…お世話係は16歳以上の者のみと決められていますから」
世話係は城が募集している立派な仕事。
つまり、16歳、この国で働くことが許されている年齢に達していないと就くことは出来ない。
「そっかぁ…あ、でもレリスは16歳だからお世話係できるね!」
「そうだよ!レリスはお兄さんだもんね!」
子供達の無邪気な声に何だか心苦しくなる。
確かに…興味はある。あるけれど…
「そう、ですね。でも…僕は目が見えませんから…ちゃんとお世話をすることが出来るかどうか…」
僕が苦笑してそう言うと、一人の子が僕の手をきゅっ、と掴む。
「レリスなら出来るよ!だって、レリスはご飯も綺麗に食べられるし、お洗濯もできるでしょ?レリスには見えなくてもちゃんと見えてるんだよ!」
見えなくても見えてる。
矛盾しているはずのその言葉が、僕は凄く嬉しくて…
喜びと同時に、見えないから僕にはどうせ無理だと諦めていた竜への興味がふつふつと湧き上がってくるのを感じた。
「…僕にも、出来ると思いますか?」
「うん!レリスなら出来る!」
「私もそう思う!レリスはなーんでも出来るんだよ!」
「ぼ、僕もそう思う!」
竜への興味。
それから…莫大な報酬。
そうだ…冷静に考えたらこれはチャンスかもしれない。
竜を回復させることが出来れば報酬を手に入れることが出来る。
まさか、神に祈ったことがこんなにすぐ叶うなんて…
孤児院への恩返しも出来るし、初めてここまで強く惹かれた竜という存在に関わることも出来る。
目が見えないからなんて言い訳してる場合じゃない。
僕に勇気をくれるこの子達の為にも、そして、自分の為にも…
まずは一歩踏み出すことから始めないと。
「……分かりました。では、一度シスターに相談してからお世話係に立候補してこようと思います」
きっと僕はこの場所に甘えていたんだ。
無条件に居場所をくれるこの暖かい場所に…。
恩返しをしたいと思うだけで、自分から行動できていなかった。
本当にこの場所を大切に思うなら、守りたいなら…この目を言い訳に最初から諦めるだけじゃ駄目だったんだ。
怖くても、失敗しても…
自分から、行動しないと!
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