4 / 5

盲目の白い花 4

早速その日の夜にシスターリアラに世話係に立候補したいと相談すると、予想通り最初は反対…というよりも、心配された。 「レリスの意思は尊重したい。けれど、私は心配なの…確かにあなたは見えなくても音の反響や気配で歩くことも物を動かすことも出来る。それでも、見えないということに変わりはないの」 「……はい。分かっています」 本気で心配しているからこそ、シスターも本音で話してくれているのが伝わってくる。 それなら、僕も本音で、全力で応えなければ。 「今まで…この目を言い訳に僕は何も行動が出来ませんでした…。与えられるもので満足していた。でも、それでは駄目だと気付いたんです」 「レリス…私達は、この孤児院は、見返りを求めて貴方に手を差し伸べたのではないのよ?」 「わかっています。でも…僕は、大好きなこの場所を守りたい。このままでは駄目だと気付かせてくれた子供たちの為にも……」 シスターが僕をジッと見つめているのを感じて、僕も動かずにその視線を受け止める。 そして、先に口を開いたのはシスターだった。 「……初めてね。レリスがここまで自分の意見を主張するのは」 「そう、ですね。自分でも少し驚きです」 もちろん孤児院の為という気持ちは強い。 でも、それと同じくらい…いや、もしかしたらそれ以上に… 「何故かは分かりませんが…凄く興味があるんです。竜という存在に 」 「…命を落としてしまうかもしれないのよ?」 「覚悟の上です」 死んでしまうかもしれないという恐怖がない訳では無い。 けれど、それよりも一度でいいから見てみたい気持ちの方が強い。 「お願いしますシスター…。僕は変わりたいんです」 僕の言葉に、シスターは悩んでいるようだった。 僕はまた黙ってシスターの言葉を待つ。 そして… 「……わかったわ。そこまで言うのならもう何も言えない。応援するわ」 「シスター…っ!」 「初めて貴方を見た時…まるで感情をなくした人形のようだった…。守ってあげなくちゃと思ったの。でも…守ってばかりじゃ駄目ね。レリスだって男の子だもの。誰かを…大切なものを守りたいって思うのは自然なことだわ」 「…今でも女の人に間違えられますけどね」 僕が少しだけ不服そうにそう言うと、シスターはクスクス笑う。 昔からよく女の人に間違えられるんだ… 自分の姿は4歳から見れていないから分からないけれど、そんなに女っぽいのかな? 「昔に比べれば逞しくなったわよ。立派に育って…誇らしいわ」 シスターが僕の横に座るのを音と気配で感じとる。 優しく暖かい手が僕の頭を撫でて、手を握った。 「いつでも帰ってきていいからね。ここは貴方の家なんだから」 「はい…シスターも無理しないでくださいね」 「えぇ、約束するわ」 血は繋がっていないけれど、それでもシスターは僕のもう一人の母だと思っている。 この絆は決して消えることは無い。 シスターの手の温もりを感じながら、僕は改めてこの場所に拾われたことに感謝していた。

ともだちにシェアしよう!