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第17話

繋がりがほどける瞬間は、さみしい。 これはどんなときも変わらない。 口に出せなくて背中にしがみついたら、勢いが強くなって終わるのも早くなる。 (でも次も早いのは、ありえない! 体力の化け物か! ) 「や、あの……この格好、何。ケダモノみたいなんだけど」 「ほら、人間ってケダモノじゃん? 人間らしくね?」 「ひゃ……っ、ちょ……ま、っ」 ぐ、と押しつけられたソレが中に入ってくる。 四つん這いにされて上からのしかかられていた。 体格差があるから本当に襲われているようにしか見えなかった。 「征服欲が満たされる感じ、いい」 「あ、あ、あっ!」 手をシーツにつく。 穿たれる度、ひくんってなる。 なんか、いつもより感じるような気もする。 口からはよだれを垂れ流してるし、 とんでもない事になってるんだろう。 二度目は、早く呆気なくのぼりつめた。 どくどく、と薄膜越しに吐き出され、くたっとうつ伏せになった。 「いい眺め。しっかり突き出しちゃって」 お尻を撫で回された。 のしかかったまま身体の下に手を回している。 乳首と、零自身を指で奏でられた。 「……やぁ……も、もう」 また息が荒くなる。 濡れた吐息なんて、また勘違いさせそうで。 勢いが衰えていない熱く硬いモノが、 腰の辺りに触れている。 「……どうなってんだよ」 「零がかわいいからこうなる。俺、他のやつだと何も感じないんだよな」 「ちょっとだけ休ませて。二回もしてるんだからね!」 くったりとシーツの上に身を横たえた零は、横暴な男に必死の懇願をした。 「……若さって怖いって自分でも思う。まだあと三回はできそう」 平然としている天音には何を言っても無駄なのだろう。 隣に横たわりお腹の辺りに腕を絡めてくる。 「起きたらシャワー行こう。そこにあるから」 掠れた甘い声が耳に届いたのがトドメだった。 急激な眠気に襲われてそのまま寝てしまった。 「いてて……全身が筋肉痛だよ」 まだ真夜中の時間らしく外は真っ暗。 目を覚ました零は、天音に抱き込まれているのに気づいた。 (寝てる……さすがに疲れてるのか) 横顔は端正で、かなりの男前。 思わずため息がもれるものの ド変態の本性を持った野蛮な男なので、 見た目に騙されてはいけない。 「今のうちに寝顔を堪能しとこ」 意外にもあどけなさが残る寝顔だ。 長いまつ毛、切れ長の眼差しは閉じられ、 薄く開いた唇からは息が漏れていた。 見ていると吸い込まれるように、唇を重ねていた。 「……っ」 自分のした事に驚き、飛び退いた零は、手首を掴まれ足も絡められているのに気づいた。 「あ、え、っと今のは冗談。出来心だから許して……!」 「そういうのは起きてる時にしてくれていいんだぜ」 くっくっ、と喉を鳴らす様は悪魔そのものだった。 形勢逆転され、呆気なく組み敷かれた。 真上から見下ろされ、問われる。 「お誘いのお礼は、何がいい?」 「とりあえずゆっくりシャワーで洗い流して」 「どうせすぐに濡れそぼるのに」 「シャワー浴びるしね」 「俺とお前の……で」 「エロすぎ! オブラートに包めよ!」 「オブラートってなんだっけ? あ、薬飲む時に包むやつか」 たくましい腕に囲われていて、起き上がれない。 いや、身体がだるくて起きれないのだ。 「元気じゃん。これなら期待してもよさげ?」 からかっているだけだ。 こんな風にした男の腕を引っ掴んで起き上がり、ベッドから出ようとしたが失敗した。 「あれ……動けない」 「体力ねぇな。しゃあない。俺が運んでやるから安心しろ」 お姫様抱っこされシャワールームに連行された。 一応、気をつかってくれたけど、 やっぱり最後までした……。 (なんでちゃんと、用意してるんだよ。もしかして、事前に企んでたのか?) おかげでその後ぐっすり寝てしまい、起きた時にはすっかり明るくなっていた。 「おはよう?」 「おはよう……」 髪を弄ばれていた。 特に伸ばしてないが、柔らかいくせっ毛なので起きたての寝癖がひどい。 その髪を楽しげに触っているから、こっぱずかしくて嫌になる。 こちらに触れてくる天音は、しっかり身繕いしている。 対して零は、素っ裸だった。 ベッドに沈んだままの零をかわいがり爽やかな微笑みを浮かべている。 「そのなんとかって先生を腹黒って言うけど、自分はどうなの? 真っ黒じゃん」 「俺なんてまだかわいいもんだろ。表裏もないし分かりやすいしさ」 「開き直ってる……」 「とりあえず飯食おう。そろそろここを出るぜ」 スマホの時刻表示を見せられて驚いた 「6時30分か……どうりで明るいと思った」 「服着るまで待ってやるから」 「……先に起きて着替えてるのがむかつく」 「気持ちよさそうに寝てるから起こすのも忍びなくて」 「……あ、カー〇美味しかった。ありがとう」 「ん。紙袋に詰めといたから」 床に置かれた紙袋を見て笑顔になった。 鬼畜な御曹司の思うがまま踊らされた天音だったが朝帰りの言い訳を考えていなかった。 実家のマンションに帰り合鍵でドアを開けると、 にやにや笑う母がいてそら恐ろしくなる。 「あら、零、おはよう。朝帰りくらい気にしないわよ。 今日、日曜日だしね?」 バッグと、紙袋をかかえ、姿勢を低くして通り抜けようとする。 (朝帰りなんて初めてだし、混乱してる) 「……れ、連絡忘れてた。ごめん」 「……虫刺されには絆創膏貼っときなさいよ」 首筋に指を向けられ、内心悲鳴をあげた。 (い、いつつけられた!? シャワーしてる時かな……) 「……相手、天音くんよね。高校の頃も付き合ってたからヨリ戻したのね」 全部お見通しなのが、恐ろしい。 「いいの。愛し合ってる二人にとやかく言わないわ」 「……、帰って早々愛想なくてすみません。 寝ます。夕方まで起こさないで」 玄関から先に進めないので母親に言いおいて部屋に向かった。 (普段は使わない丁寧語になるほど混乱していた) その背中に声がかかる。 「……昨日の夜、天音くんから電話があったの。 零は俺のところにいます。 朝になったらちゃんと送り届けますのでご心配なく。 息子さんは傷一つなくお返ししますからって。ふふふ」 (ぎゃーー!! あいつ、余計なことまで言いやがって!!) 虫刺されの部分が、疼いているのは錯覚だろうか。とにかく寝てしまいたい。 しっかり根回ししてくれたことには感謝すればいいのか悩む。 親が理解あることを知っているから、できたことだと思う零だった。

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