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第4話
「いらっしゃい」
「こんばんは、お久しぶりです冴子(さえこ)さん」
「あらっ、どうしてたの?寂しかったじゃない」
「少し仕事で忙しくて俺も来たかったんだがね」
「元気そうだわね。いつもので良いかしら?」
「いつもので頼みます。冴子さん」
最近は仕事が忙しくて来れてなかった俺の隠れ家的な店。
冴子さんは綺麗な女性に見えるのだが本当は男性。
性同一性障害。
まだ家族にも話せてない為に戸籍上は男性のままだ。
この店に来たのは本当に偶然だった。
はるちゃんを好きで忘れなくて手当たり次第に男女問わずに関係を持とうとしたがどうしても最後まで出来ないでいた。
その日も最後まで出来ずに女と別れてフラフラと街中を歩いていると冴子さんに声を掛けられた。
「うちに寄っていかない?」
「えっ?」
「この店なのよ。一杯だけ奢るから寄って行ってよ。ねぇっ、ダメかしら?」
あまりにも綺麗な顔立ちで笑うから俺は惹きつけられた。
冴子さんは本当に綺麗な人だ。
だけどそれ以外の感情は沸き上がる事はなくて今でもこうしてお店に顔を出せている。
冴子さんは俺をたまに見かけていつも連れている相手が違うから心配をして声を掛けてくれたと話してくれた。
「やだぁ〜!」
「どうして?可愛いのにダメ?」
奥から騒がしい声が聞こえている冴子さんのお店にしては騒がしい連中だった。
ここに来る常連は冴子の落ち着いた感じの雰囲気が好きで癒しを求めてやって来るのだが今日の客は違うみたいだ。
「あっ、やっぱり少し騒がしいかしらごめんなさいね。あの真ん中にいる男性がどうしても昔の貴方に似ていてね。少し前に声を掛けたのよ」
「似てますか?」
「そうね・・・貴方に出会ったあの日と彼は同じ目をしていたのよ」
容姿が似ているとかではなくて荒れていたあの頃の俺に似ているんだ彼。
男性にしては小柄で笑うとフワッとしている感じが・・・・・。
「はるちゃん」
俺は無意識にはるちゃんの名前を呼んでいたが彼らの席からの笑い声でそれはかき消された。
笑顔がはるちゃんに似ていたから・・・。
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