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第5話

暫くすると彼らは店から出て行ってしまった。 静かになった店内はカウンターにいる俺とテーブル席に2組だけだった。 「今日はごめんなさいね。皆さんに私から一杯だけ奢らせてもらうわ」 そう言いながら冴子さんは常連の好みの酒をテーブルにタイミングを見て置いていくのだ。 やっぱりこの人の気配りは真似できない。 冴子さんなら付き合って良いと思った事があるがけれどそれは恋愛できるのかと考えた。 考えて直ぐに出した答えは『出来ない』。 俺はまだはるちゃんの事が好きなんだと思い知らされるだけだった。 ちらっと掛けてある時計に目をやると日付けが変わりかけていた。 「そろそろ、帰るよ。冴子さん」 「あらっ、もうこんな時間なのでまたきて下さいな」 「はい。では、また冴子さん」 俺は冴子さんに軽く頭を下げると冴子さんはいつもの様に優しく微笑んで見送ってくれた。 綺麗で気配りが出来る冴子さんはきっと世間では理想の女性なんだろう。 早く戸籍も女性になれば冴子さんも幸せになれるんじゃないだろうか? 理解ある男性と結婚も出来るだろう。 「すみません」 そんな事を考えながらゆっくりと歩いていると店から少し離れた路地で話しかけられた。 よく見るとだいぶん前に出て行った騒がしくしていた男性。

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