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ナイトプールの交錯
色とりどりの鮮やかな照明に、DJが流すBGM。プールサイドには、レストランがありハワイアンスタイルの料理やトロピカルドリンクが運ばれている。
プールの水面には、花模様のプロジェクションマッピングが映し出され、映えた水面で写真を撮る女がたくさん群れていた。そんな自撮りに夢中な子達に混じり、オレらも混ざって自撮りをする。
「待って、今ぜっったい顔ブスだったから撮り直して」
「風太はいつ撮っても変わんないから撮り直さない〜〜」
「えぇ?酷くない??アカネの時は100枚ぐらい撮りなおすのに!!」
「最高にかわいく盛らないと、風太の隣に並べられないもーん」
そのまま風太に抱きついて、程よく引き締まった体に触れた。自分の体が少し沈んでスマホを落っことしそうになる。だけど、風太のだしなんなら防水だからプールに落としても大丈夫なんだけど。
「スマホ、落とさないでよ」
「はーい」
頭の中で考えている事を見透かされ、すぐにスマホを防水バッグに入れて風太へ返した。
それにしても、風太のお陰でタダでプールに入れるし、その後ホテルに泊まれるなんて家に帰りたくないオレは、週末になると楽しくおちゃらけていた。だけど正直、風太とこの関係は辛い。
「どうしたの?アカネ」
そんなオレの考えとは裏腹に悪びれた様子もなく笑顔な風太。
「なんでもない。腹減ったし、何か食おうぜ」
風太に背を向け、プールサイドへ移動する。バシャバシャと水面に映し出される花を蹴散らしながらプールサイドへ上がった。
***
お互いネコだと判明したあの日。風太から気分が乗らないと言われ結果的には挿れてもらえなかった。
オレは風太みたいに昂ぶった熱を治めることができず、そんな状態でホテルに戻れるはずもなく1人で処理しようとしていたら……
「指、入れてあげようか?」
風太が俺の右手首を掴み、口元へ引っ張った。口を開けたかと思うと、いやらしく人差し指と中指を舐め、水掻きの部分を舌先でツンツンと舐められれば、ゾクリと背中に電流みたいのが走る。
「お、お願いしま、す……」
顔を真っ赤にして思ってることを素直に言った。オレの指を嬲 るように舐め、指の間から覗く、風太の赤い舌に魅せられた。そして、自身は張り詰めるように痛い。
風太はゆっくりと移動しながら背後に座ると、オレの足を大きく開かせた。
後ろからだけれど、小さいオレ自身は風太から丸見えのはずで、この後何て言われるのだろうと不安になる。
『女の子みたい』
高校でやったプールの授業。誰にも見られないように、こっそりタオルで隠しながら着替えていた暗黒時代。タオルを取られて言われた言葉。今でも覚えている。一緒のグループにいた大形 が大声で言った言葉。
その声はクラス中に響き渡り、全ての目線がオレに注がれた。当然、情報は一気に広まる。それ以来イタズラされる事が増え、例え単位を落とそうがプールの授業には一切出なかった。
小学校からプールが大好きだったのに。
「アカネ……?」
風太の声で現実に引き戻された。ものすごく風太の肌に触れたくなって、もう片方の手で風太の腕に縋り付き、体重を預ける。
風太はオレ自身について何も触れることなく、指を押し進めた。触れて欲しくないと思いつつ、触れられないと悲しい。そんな矛盾した思いが頭の中でいっぱいになる。
「力抜いてね……」
ツプリと指先が蕾の中へ入っていった。自分の指なのに、動かすのは風太だから変な感じ。これ以上は恥ずかしくて見れない。誤魔化すように風太の首筋へ鼻を押し付ける。
「ふふっ……くすぐったいよ。アカネ」
鼻をかぷりと甘噛みされ、ただでさえ緊張で息が吸えないのにもっと息苦しくなった。自然と口が開き、声が漏れ出る。
「あっ、んっ、いき、くるし……」
上を向いて口を大きく開ける。はぁ、はぁとだらし無く犬のように舌を出し、呼吸した。すると、鼻に感じてた違和感が無くなり口が塞がれる。じゅるじゅるとお互いの唾液が行き来し、混ざり合った。
頭に酸素が行き渡らなくなって、ビクッと足の指先が揺れたかと思えば白濁を吐き出していた。ピクピクと揺れ、少量の白濁が自分の腹を濡らす。
「はぁーっ、はぁっ、はぁ、はぁはぁ……」
チラリと興味本意で風太の下半身を覗き見した時、風太自身何も反応を示していなかった。その事実がオレの心に深く突き刺さる。
***
「ねーね、そこの子達ご飯食べた??まだなら奢ってあげるからおいでよ」
「え?ほんと食べる、食べる〜」
仕事終わりのリーマンがボクらに声をかけた。このホテルの場所がビジネス街に近いから時々、興味本意で遊びにくる人が多い。
極力、風太と2人きりになるのを避けたいオレはこうして初対面の人のところに行くことが増えた。それを見て風太はよく思ってないことも知っている。
プールサイドにあるテーブルへ行き、向かい側の空いてる席に座った。オレに声をかけてきたリーマンは、プールなのにメガネをかけてて、黒髪のオールバックだ。すっごくオレの好み。きっとこの人は風太と違ってタチだ。
もう1人は茶髪で明るく、黒髪の人の先輩らしい。話題は全部そいつから振られる。適当に答えつつ、目線は黒髪の人に向ける。黒髪の彼は、雄賀多 っていうらしい。
「雄賀多さんは、この後時間空いてたりします??」
「ちよっとアカネ、また今日も行くの?」
風太が2人の隙をついて小声で話しかけてきた。
「風太には関係ないでしょ。オレはヤりたいの」
「だからってそんな見境なくヤらなくてもいいでしょ」
「風太はオレには勃たないもんね」
「ちがっ……「なーにー??ケンカ??仲悪いの君ら」
茶髪の……あー興味ねぇから名前忘れた。ペラペラ喋るやつ、同属嫌悪?って言うんだっけ?その言葉の意味のまま、コイツ嫌いだ。
「いいえーケンカするほど仲良いって言うじゃないですか〜仲良しですよオレら」
オレは風太に抱きついた。それすらも気に入らないみたいで、抱き返して来ない。まぁいいけど。
「抱きつく事自体、抵抗ないの?」
雄賀多さんがゆっくりと立ち上がって、オレの隣に立った。
「僕にも抱きついて欲しいな??」
「オレでよければ、もちろんですっ!」
むぎゅっと抱きついた。ジムに行ってるのか、程よく筋肉が付いていて思った以上に硬い。ぷにぷにのビール腹じゃない。
抱きついて上を見上げれば、雄賀多さんと目が合う。ふふっと微笑まれ、大人の魅力にやられたオレは心臓がドキドキしていた。
つい最近、直感が外れたばっかりだけど今度は合ってる気がする。
***
真夏の夜、ナイトプールが閉園した後は階下のホテルでエッチをする。今日はターゲットロックオンした雄賀多さんの後について行き、シャワー浴びる前にベッドへ誘うように寝転んだ。
「アカネちゃんってさ、○○高校だった?」
「えっ……?」
そんな過去の話なんて話していない。どうしてオレの出身校を知っているんだろう??今さらだけど、急に怖くなったのと嫌な予感がして「用事を思い出したから」なんてバレバレのウソをついて部屋のドアへ走った。
「やっぱそうなんだ〜まぁ調べたからなんだけどね」
狭いホテルの一室。足をかけられて簡単に転ぶ。立ち上がろうとすれば、ふくらはぎを踏まれ立てなくなった。
「調べた?何を?オレ??オレこんな格好してるけど不良じゃない!人違いだ!!」
「人違いじゃないよ。米原 暁音 」
「なんでオレの名前知ってんの」
「僕は何でも知ってるよ」
「え?」
怖い、怖い、怖い。オレは雄賀多さんの事を何も知らなくて、向こうはオレの事を調べ上げている。そんな状況、今まで1度もあったことがない。
ガクガクと足が震えだし、風太の顔が頭をよぎった。
「弟の人生狂わせた暁音くん。その体、僕の思う存分楽しませてもらうね」
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