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神様

目を覚ますとそこは金色だった。  とうとう自分は死んでしまったのだと自覚すると同時に、予想していたよりもずっとあっさりとしていたことに少し驚いた。  勝手な想像では生きたまま食べられるとか、そういった惨い仕打ちが待っているのだとばかり思っていた。  伸びをすると、金色が冬雪頬をくすぐる。柔らかいのに滑らかでもふもふしている。 「……ん?」  予想外の感触に、まどろんでいた脳が一気に覚醒する。  金色だと思っていた世界は動物の尾のようだ。それがあまりにも多いもので視界いっぱい金色で埋め尽くされているのだ。 「起きた、のか……?」  少しかすれた声が近くから聞こえる。かすれて低くなっているが、それは冬雪が意識を失う前に聞いた声と同じだ。  慌てて身を起こして周囲を見渡す。上等な畳と箔押しされた立派な襖。冬雪の下には綿がたくさん入った敷布団が敷かれている。 「……っ」  そして、冬雪が掛布団代わりにしていた金色の尾が九つ、長身の男性の腰から生えている。  その男性の髪は長く尾と同じように金色で、何より狐のような耳が生えている。白磁のような肌の整った顔立ちのその男性は、冬雪が生きているなかで見た中では一番美しくて、一番浮世離れしている。  じっと金色の瞳が冬雪を見つめる。目が合えば自然と体が固まって動けなくなってしまう。瞳孔が一瞬細くなる。それを見た瞬間に、冬雪は自然この男性が黒曜村の守り神なのだと察した。 「陽毬、湯を持ってきてくれ」 「承知しました」  視線を逸らさずに守り神が言うと、襖越しに返事がある。声からして少年だろうか。  少年が去って行く気配がすると、守り神は大きな息をひとつ吐き出す。 「……私は朽葉だ。 黒曜村の守り神で、この社の主だ」  そう言った後に朽葉は居心地悪そうに視線を逸らした。そのおかげで体から力が抜ける。  しかし、お互いの間に流れる気まずさは変わらない。

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