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4-4 しがみついていた物がゴミ屑だと知った日
上着も、軍帽も脱いできた。街の中央にある噴水広場から見上げる空は抜けるように青い。気持ちのいいその景色を、俺は目を細めて見ている。
昔はよかった。モンスター退治や、盗賊討伐を仲間と一緒にして、笑っていた。この青い空を何の憂いもなく見て、単純に綺麗だと思っていた。
先に広がる道に暗雲などなく、どこまでも行けるものだと思っていた。青臭い…ガキの頃の話だ。
後も先も、考えていなかった。口ばかりで何もしない奴らに嫌気がさした。
キラキラした高見に見えたものは、とんだ屑籠だったんだろう。見てくれだけがかっこよかっただけだ。今となってはゴミにしか見えない。
「はぁ…」
だが、そのゴミにしがみついていたのも事実だ。実際俺は今、清々してもいたが同時に先も見えなくなっている。
軍人以外の生き方を知らないからだろう。遊びもなくきてしまったから、世界の広さなど想像ができない。狭い世界でしか、生きてこなかった。
カツンと、軍靴の音がする。石の道を歩くその音は、知っている。だが、ここにいるはずのない人物だ。音のする方を見た俺は、そこに立つ男を見て固まった。
「こんにちは、グラースさん」
「お前…」
「遊びにきちゃいました」
わざとらしい子供のようなリアクションをするランセルは、俺の隣に腰を下ろす。いい年した男二人が白昼堂々ベンチに座って言葉もなく項垂れるって、どういう光景だ。
思いながらも、さっきよりは浮上している。どうしようもない怒りや虚しさを一人で抱え込むよりは、いくぶんマシにはなっている。
「お前、軍の引き上げあるだろ」
「ハリスにお願いしてきちゃいました」
「あいつ、若いのに優秀だな。お前みたいな困った上司でも文句言わないんだから」
まだ若いし、正直言葉遣いはどうなのかとも思うが、仕事はとても有能だ。細かな事に気がついてフォローしたり、言われなくても先々の事を見越して準備や根回しをしたり。
ランセルは「うーん」と少し考えてから、一つやんわりと頷いた。
「大分付き合いが長いですからね。それに、あの性格がいいのでしょう。妙に力が入っている訳ではありませんし、どんな相手の懐にも入って行きますからね」
「それは言えるか」
考えれば俺の時にも随分すんなりと内部に入った。そう考えると少しだけ、あの青年が恐ろしくも思える。
「…仕事、終わりました?」
遠慮がちに問いかけるな。その「終わりました?」は含みがありすぎて頭が痛い。
「飲みに行きませんか?」
「日中だぞ」
「いいじゃありませんか、お仕事終わったなら」
そう言って、半分強引に俺の腕を引く。俺も少し考えて、それに乗った。確かに、酒の一つも飲みたい気分だった。
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