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7-1 拒絶するのは心のありかを知らないから

 翌日、目を覚ませばあいつはいなくなっていた。  それから、あいつは俺に日中会いにこなくなった。俺に食事を運んでくるのはハリスで、俺はそれを少しだけ食べた。  あいつが来るのは必ず夜。俺を犯しにだけくる。薬の反応がない事に苛立ち、怒り任せに俺を抱いていく。その度に、泣きそうになっている。俺の心は冷たくなる。  もしかしたら、少しは俺の知っているランセルに戻るかもしれない。そう思っていた俺の甘さを呪った。  監禁生活4日目、俺は全てを拒絶した。  部屋に言葉と血で結界を張った。全てにだ。扉、窓、壁、全てに結界を張っておいた。これで誰もこの部屋に入れない。俺が自ら外に出ない限り、ここは隔離された。  俺はソファーに転がり、ぼんやりと天井を見上げている。食事を拒絶し、水も拒絶した。そうして、眠ってしまった。意識を深く沈めて、決して起きないように意識に蓋をしたのだ。  本来獣人族は飢餓になれば本能が働く。食べて生命を維持しようと動く。だが俺は混血だ、本能は薄い。  魔人族は食べなくても生きられる。自らの魔力を体内で回してそれで生命活動ができる。だが混血の俺はそれができるほど体が丈夫ではない。そうなれば、膨大な魔力に体が耐えられない。内から傷ついてダメになる。  これが、俺の答えだった。ランセルに対する、俺の拒絶と答えだ。  俺はお前の好きにはならない。俺はお前の今の行為を受け入れられない。子を産む為にここにいる、その虚しさに耐えられない。  閉じて行くその意識の外で、音がしている。ドアを叩く音がずっとしている。でもそれは、俺にとってはもうどうでもいいものだった。

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