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8-3 穏やかな日常は愛を育む

 衝動的な物をそぎ落とすと、コイツとのセックスは酷くゆったりとしている。手際が悪いんじゃない、確かめるように触れてくるんだ。 「はっ……はぁ……」  触れる手が、体の線を確かめる。胸元を遊びながら、足の付け根の内側を触れてくるのが癖なんだろう。薄い部分に触れられて、思わず声が漏れる。 「鍛えられた体ですよね。見ていて、本当に綺麗ですよ」 「お前だって変わらないだろ」  腹筋に手を添えてそんな事を言うのに笑う。更に言えば、普通抱く相手にはもっと柔らかさを求めるんじゃないのか?  ランセルだって、しっかりとした筋肉がついている。これ見よがしではないが、触れるその奥が硬く引き締まっているのは分かる。 「私は元々の厚みがありませんからね。グラースさんのは厚みも引き締まりもよくて」 「とうてい、抱く側に求める条件じゃないな」  だが、それでいいんだろうと思う。萎えなきゃいいだろ、趣味も色々だ。  その、腹の辺りをペロリと舐められる。緩い刺激に、奥が沸く。瞬間的な刺激ではない、とろ火に炙られるように蓄積されていくそれが、後々に頭の中までかき乱していく。決定的な快楽など、ランセルは与えてくれない。 「腰、揺れてますよ」 「お前が焦らすようにするからだろ」 「でも、気持ちいいでしょ? ほら、こうして…」 「っ!」  指先が高ぶりの先端を撫で、僅かに溜まった透明な物を押し戻すように鈴口を探る。潜り込ませるようにされると僅かな痛みと、それ以上の刺激に息が詰まる。 「あぁ、滲んできましたね。もう、奥が気持ち良くなりますか?」 「ふっ、はぁぁ!」  指が一本、奥へと潜り込む。散々に慣らされて、このくらいでは苦痛を感じなくなった。それよりもその指が奥を探る方が気持ちがいい。無遠慮にまさぐられていく。  ぬるりと入り込んだ指が、輪を描くように中で回される。するとそこは独りでに緩くなって広がっていく。心なしか、中も潤いが増した気がした。 「お前、また…」 「だって、傷つけたくありませんし」  口を尖らせるコイツが何をしたのかは直ぐに分かった。  緑竜は他人の魔力に干渉する能力に長けている。特にコイツはそれが得意だ。指先から魔力を発して俺のそこを緩めたのが直ぐに分かる。 「手間をかけろ」 「それでも時間かかりますもん。私の大きさ、グラースさんもご存じでしょ?」 「う……」  それは、まぁ、身をもって知っている。  竜人族はどうしてこうも無駄にデカイ。そして長い。バカなんじゃないのか。ってか、通常時と発情時の大きさに差異がありすぎるだろ。  ランセルがニヤリと笑い、更に俺の中を緩めていく。もう、好きにしろ。抵抗したところでこうなれば俺はどうすることも出来ん。 「できれば、あまりここで今は感じて欲しくないんですよね」 「あぁ?」 「青筋立てないで下さいよ。ほら、薬を使ったらここ、凄く敏感になりますから」  また中で、指がくるりと触れていく。そういえば、確かにゾクゾクしたものが広がるのが早い。いつもは指二本くらいで感じる感覚が、こんなに緩い攻めである。 「だから、ここに私のを受け入れて思い切りかき回したら、気持ち良くてグラースさん最高に可愛い顔をしてくれるかなって」 「考える事がとんでもないぞ!」 「だって、最高の快楽を味わって頂きたいんです。それに、もう十分に弛緩させてしまいましたしね」  言うと、ランセルは俺の中からそっと指を抜き去る。そしてあろう事か本当に指一本の解しで熱い切っ先を俺の後ろにあてがいやがった。 「息、吐いてくださいね」 「ちょ! まっ、あぁ!」  痛みではない、強すぎる刺激に串刺しにされる。  中に入り込んだ強張りが無遠慮に俺の中を行き来していく。圧倒的な圧迫感に苦しさを感じ、それ以上の快楽に身動きが取れない。水音が僅かに聞こえ、押し入られる度におかしくなる。  ランセルは容赦なく俺の最奥を目指して腰を突き込んでくる。そしてその切っ先が、行き止まりにぶち当たった。 「はっ! あっっ、あぁ!」 「くっ、良く締まります」  薬を飲んで出来た新たな性感帯を押し上げられて、腰が浮いた。痺れるとか、そんな生やさしい感覚じゃない。突き上げられる度、弱い電撃でも食らってるのかと思う。  だが、痛みではないものも訴えてくる。それを証拠に、俺のものは張り詰めていく。確かに中で感じているんだ。  目尻に浮いた涙を、ゆっくりと唇がすくい上げる。ブルブルと体は震えたまま、コイツを受け入れている。  首に手を回し、不安定な状態を少しでも緩和させたくて抱きしめた。ピッタリと合わさる肌が、今はこんなにも安心する。 「可愛いですよ、グラースさん。それに、凄く気持ちがいい」 「くっ!」 「そんなに歯を食いしばらないでください。ほら、声を聞かせて」  するりと入ってきた舌が絡まっていく。閉ざしていたものを解かれて、止められなくなる。俺の嬌声がコイツの中に吸い込まれていく。 「あぁ、いいですねこれ。貴方の声が直接頭の中に響く」 「あっ、やっ、めぇ! あぁ!」 「止めませんし、止めていいんですか?」  クスクス笑ったコイツの動きが、嘘のように止まってしまう。熱い高ぶりを奥に押し当てたまま、動こうとしない。  楽になるはずだ。なのに、ちっともそうはなっていかない。ジワジワと甘く痺れて、それが余計に苦しくなる。  荒い息がずっと漏れている。一度知った味は、なんて凶暴だ。腰が動いて、微かに中を掠めるだけでブルッと震えが走る。緩慢な動きに、切なくなっていく。 「どうですか? 動いて欲しい?」 「は…あっ……あぁ…」 「腰、ずっと揺れてますね」 「言う、なぁ…」 「分かります? 中がキュムキュムと、私のを甘噛みしてますよ」  分かってるよそんなことは! 下半身だけが別の生き物みたいにコイツを求めてせっついている。もっと欲しいと俺を急き立てている。  分かっていて、認めたく無い俺もいる。こんな淫乱な体、していなかったはずだ。 「欲しいですよね?」 「ちが…」 「違うんですか? でも、ごめんなさい。どうやら私の方が限界です」  微かに触れていただけの内部に、ズンッと押し込まれて俺は泣いた。同時に、酷く骨にも響くような痺れに足が突っ張る。  うねるように締め上げて、中がヒクヒクと意志に関係なく痙攣しているように思う。 「あぁ、イッてしまいましたか」 「な? え? あぁ!」 「中、凄いですよ。絡みついて離れようとしない。食べられてしまいそうですね、本望ですが」  そのまま激しく抽挿を繰り返される度、俺は襲うような快楽に飲まれていく。もう訳が分からなくなってきて、コイツの首をただ抱きしめて震えた。

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