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8-4 穏やかな日常は愛を育む

 そうして受けた精を、俺の体は受け止めていく。最奥へと注ぎ込まれたそれが、俺のひくついている部分に流れ込む。  しっとりと汗をかくランセルが俺の胸の上に落ちてきて、激しく口腔をまさぐるようなキスをして、コイツが最後の一滴まで俺の中に注ぎ込むのをただ、感じていた。  そうして一晩、俺とコイツは抱き合っていた。二度ほど俺の中で果てたが、薬は反応せずに青い印となって消えていった。 「駄目、でしたか」  泣いてしまいそうなほどにガックリと肩を落とすコイツを、俺は力の入らない体に鞭を打って背を軽く叩く。  まったく、そう簡単じゃ無いのは分かってただろうに。 「お前、薬が反応してもしなくても落ち込むんだな」 「…分かっていたことですが、辛いです。簡単じゃないのも、知っているのですが」  苦笑して、隣に寝転ぶコイツを俺は腕に抱いた。  俺はそう期待はしていなかった。そんなに簡単にいくならとっくの昔に子の1人や2人できているだろう。それが可能じゃないからこそ、竜人族は減っている。 「前までは、この青い印を見るとほっとしていたのですがね」 「ん?」  俺の横で、ランセルがぽつりとそんな事を言う。俺はそれに耳を傾けながら、反応をした。 「相手は私の地位や庇護、家名が欲しくて私に跨がります。私は早くこんな事が終わればいいと、子を望みます。でもそこに、愛情なんてないんです。結果として子供が欲しいという共通意志はあっても、虚しい打算しかなかったんです。だからこそ、子が結ばれない証しである青い印を見ると、どこかでほっとしました」 「ランセル…」 「でも今は、こんなにも苦しい。私は、赤い印が見たかったのでしょうね。貴方を求めて、初めて子が成ればいいと思っているんです。結ばれればいいと、思うんです」  寂しそうに伝えるその言葉を、俺は受け止めている。ランセルの中にある感情を、俺も受け止められる。  俺はそんなに簡単じゃないと思っていたが、コイツは期待したんだろう。薬に色がついた、その時に。 「また、相手してやる。お前の気持ちが本当だと言うなら、俺は構わない」  言えば腕の中で身じろいだランセルが、ただ小さく頷いて、顔を胸に押し当てた。

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