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10-4 熱に触れて、君を感じる

「黄金竜! ガロンか!」  王が明らかに狼狽し、同時に憎らしく表情を歪めていくその言葉が終わらぬうちに、一人の男が部屋へと入ってきた。  金の髪に、金色の瞳をした美丈夫だった。穏やかそうな顔立ちであるのに、浮かべる表情は烈火のごとく怒りを露わにしている。  ただならない雰囲気があるその男は、俺とランセルを見て更に表情を険しくした。 「これは、どういうことです」 「どうもこうもない。これは緑竜の問題だ」 「いいえ、ランセルはジェームベルト国全てにおいて大切な存在。国境を守り国を守る緑竜軍の総司令です。その彼に手をかけるなら、他国とて黙ってはいません」 「王家の問題だ!」 「ランセルの身柄と、そこにいる彼の身柄については緑竜の預かりにありません」  金髪の男は厳しい声でそう言い、一枚の紙を王へと突きつけた。 「二人は国防に深く関わる。よって、その身柄は緑竜国ではなくジェームベルト全土の預かりとします。これは他国とも協議のうえ、各王家も合意の事。それでも二人をここに監禁するというなら、緑竜国は他の四国から孤立し、報復を受ける事となります」 「私はそれに合意していない!」 「通告は送ったはずです。それを無視なさったのは、貴方だと思いますが」 「!」  王は驚いた顔をしていたが、それについては俺が知っている。  確かに赤い通知は来ていた。だがそれはハリスの名前で出されていた。王は差出人の名前を見て鼻で笑い、それらを開ける事もせずに脇に置いていた。 「さぁ、引き渡しを。今後はこちらで引き取らせて頂きます」  歯が折れるのではと思えるほどに食いしばった王の目の前を、金髪の男が通り過ぎる。そして俺の結界へと手を触れ、とても穏やかに微笑んだ。 「救出が遅れて、申し訳ありませんでした。私はジェームベルト第一国軍総長、ガロンと申します。貴方の事はハリスから聞いています、グラースさん」 「ハリスが?」  俺の問いかけに、ガロンは確かに頷いた。 「貴方が連れ去られた直後、ハリスが竜化して脱出し、私に窮状を伝えてくれたのです。場を整えるのに、少し時間がかかってしまいましたがもう大丈夫です」  その言葉に、俺も気が抜けた。結界が崩れると同時に、俺も崩れてしまう。途端にランセルの体が重たくなったように思えた。 「グラースさん! 直ぐに馬車を!」  部下に命じ、ガロンは俺の肩を担ぎ、ランセルも肩に担いだ。 「そいつは怪我を…」 「大丈夫ですよ。弱っているようですが、数日寝れば平気なくらいには回復していますから。貴方が、助けてくれたのでしょ?」  その言葉に、俺がどれだけ安堵したか。助けられた事に、乾いた笑いが溢れる。同時に伝う涙が落ちて、俺は本当に全てが終わったんだと感じられた。

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