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11-2 赤い印
抱き合って、より深くキスをする。
ランセルの夜着を落として素肌に触れた。引き締まる男の体は、俺が想像していた伴侶の幻想とはずれているはずだ。いや、そもそも伴侶を持つ事を考えてもいなかったが、それでもこんなに筋肉質な相手ではなかっただろう。
それがどうだ、今ではこの体に熱を覚える。背も大して変わらない男を、俺も愛し始めている。
ベッドへと倒れ込み、俺は薬を手にする。ランセルもその手に重ね、たっぷりとキスをした。絡ませて、絡めて、頭の中が軽く茹だるくらいには求めた。
俺の幸せは、お前にかかっている。お前が俺を裏切らないなら、このままのお前でいてくれるなら、俺は満足だ。お前を幸せにできる。
とんでもない所から始まった愛情でも、今この胸にあるのは確かな愛情なんだ。
体が温まるほどに交わした唇が離れていく。そうして恐る恐る見つめた薬は、色を塗ったように真っ赤になっていた。
それを見るのは、多少恥ずかしかった。
色の濃さは愛情の深さだ。コイツが俺にそうした気持ちを持っているのは分かっていた。だがこの色は、俺もコイツの思いを受け入れ望んだ事の証しだ。それを見せつけられるのは、なんだか恥ずかしくもある。
「凄い真っ赤ですね」
手に取ったランセルが、嬉しそうに微笑む。まだ結果も分からないのに手放しに喜ぶコイツが、多少可愛いと思えるのだから重症だ。
「はい、グラースさん。あーん」
「恥ずかしい事するな!」
「いいじゃないですか。飲んで、くれるんでしょ?」
「…当然だ」
口を開けて、そこにランセルが薬を放り込み口づけをする。飲み込んだ瞬間から、これまでの物と感じ方が違う。体が熱い。腹の底が、焼き付くように熱い。
「ふっ、ぁ…」
「ふふっ、もう感じてくれているんですね」
ランセルの手が俺の腹を愛おしげに撫でる。それだけで、俺の中が変化しているのを感じる。ジンジンと痺れ、時折キュッと締まる。
こんな事は今までなかった。薬を使ったのは初めてではないはずなのに。
心得たように、ランセルは俺を高めていく。唇が体を滑る感覚は、どのくらいぶりだ。思えば王城に攫われてからしていない。
俺の体はそれでも素直に反応をしていく。滑る手が、心地よく俺を疼かせる。
されるがままも、多少癪だ。俺もランセルの体に触れる。ほんの少し膝を立て、コイツの股ぐらを下から刺激する。擦るようにすると、ランセルも気持ちがいいのか低く呻いた。
「そんなに熱烈にされると、優しくできませんよ」
「優しくする気があるのか?」
コイツの高ぶりは既に張り詰めて濡れ始めている。どれだけ興奮してるんだ。硬くなるその先端が、俺の体を汚している。これで優しくなんて、よく言えたものだ。
ランセルはニヤリと口元を歪める。鋭さのある笑みは余裕のない証拠だ。
「私は優しい旦那様が理想なんですけれど」
「似合わない事を言うな。優しい奴は拉致もレイプもしない」
「それ、言わないで下さいよ」
拗ねるな、今更だ。それでも選んだ俺がバカだ。それでも決断したのは俺だ。
腕を掴んで引き上げて、噛みつく様にキスをする。口腔を暴いて激しく舌を絡め、流れ込む唾液を飲み込む。
その間にも、ランセルは手で俺の乳首を捻り、転がしている。背に走る痺れが、俺に甘い声を上げさせた。
「激しいのが好みですか?」
「緩慢になるのは、後でもいいだろ。体力あるうちにしか出来ない事もある」
「入れたまま寝るかもしれませんよ」
「構わん」
むしろ受けようじゃないか。
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