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第1話 出会い
ガシャン――。
「あ、お兄さん、ちょっと待ちなさい」
マスターの声がする。騒がしい足音が聞こえてくる。
下で何かあったようだ。
ピアノから手を離し、耳を澄ますと勢いよくドアが開いた。
「今弾いてたのって、あんた」
息を切らしてこっちへ向かってくる男。
格好からすると先ほど客席で連れの女性を怒鳴っていた男だ。
男は興奮した様子で近寄ってくる。
「もしかして、あんたがペルソナさん?」
華奢だがすらりと背が高くモデルのようだ。思ったよりも若い。
近寄ってくると随分と中世的な整った顔立ちをしている。
化粧をすれば女性に間違われそうなくらいだ。
「誰ですか?アナタは」
殴りかかってくる気配はなさそうだ。後ろからマスターと先ほどの女性が続いて入ってきた。
「僕にピアノを教えてくれませんか!」
「はぁ?」
これが、彼との出会いだった。
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