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第2話 ショパンとジャズ
すると二階からピアノの音が聞こえてきた。
音は「演奏」となり響いた。
この店は客がいようとジャズのBGMが流れていようと二階から流れてくるピアノの音に文句をいう人はいない。
それすらも楽しんでいるようだ。
俺はマスターの好意に甘え、この店に通い詰めもっぱらピアノを叩き日頃のストレスを発散していた。
そして撮影したそれを投稿し、満足していた。
俺はピアノを弾くくせに専門用語や音楽知識を知らない。
音を覚えて、鍵盤を鳴らしているだけだからだ。
流れる演奏に耳を傾ける。この曲ってそれこそ俺みたいな素人でもわかる、クラシックのショパン?だっけ?
吸い込まれるように二階のドアを開いた、部屋の電気も点けもせず、手元もままならない暗闇で男は思いのままにピアノをはじいていた。
軽快なリズムに寸分狂いない鍵盤さばき、むしろどんどん早くなっている気がする。
勢いがすごい。
切羽詰まって奏でる鍵盤の振動で鼓膜がじんじんする。
暗闇で動くその姿に恐怖すら感じる。
弾き終わるとまるで憑き物が取れたように静寂になる室内に我に返った。
「どこに教える必要があるんだよ」
「隼人さん!良かったようやく会えた」
電気をつけ、驚愕した。彼が学生服を着ていたからだ。
「お前、学生だったの」
「真木多衣良 、高校二年です。僕にピアノ教えてください」
学ランを着ていた彼の顔が先週より幼く見えた。頭を掻きながら俺はピアノ調律に使う道具を出し始めた。
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