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第3章 ペルソナ心理
(随分と楽しそうだな。似たもの同士で気が合うのか)
サボがにやついて俺に絡んできた。
いや、正確に言うと棘しかないから表情は読み取れないのだが、声からしてわかる。
玄関のすぐ横にあるキッチンにサボは移動していた。
真木多衣良が遊びに来ると俺は決まってサボをキッチンに追いやった。うるさいからだ。
「あいつと俺は似てねえよ」
俺は風呂上りの温まった身体をビールで冷やそうと冷蔵庫に手を伸ばした。
(真木多衣良が来てから、すっかり俺の事忘れてんじゃないのかよ)
「なんだよ、妬いてんのか?あの美青年に」
(誰が妬くかよ。お前は温もりのある人間と一緒になんか居られない。棘で触れる事ができないサボテンがお前にはお似合いだ)
「うるせえな」
サボは口が悪い。
(そろそろ、真木多衣良からも声が聞こえてくるだろうよ。影ではお前の事、気味の悪い人間だって感じてくるころだろ)
「うるせえよ」
今日のサボは腹の虫が悪いようだ。サボは俺を挑発するようにどんどん声が大きくなっていく。
(頭や家庭に問題ありの生徒を預かる気分はどうだ?心地いいだろう?自分を肯定されているようで安心するだろ?お前の地獄耳で人の領域を侵して、聞こえないふりするのは大変だろうからな)
「うるせえ!黙ってろ」
図星。
サボが言う憎まれ口はいつも核心をついていて正しい。
だから腹が立つ。
いつも俺自身に腹が立って仕方がない。
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