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第4章 ジャズ仲間
「お前もチケット二枚くらい捌け」
いよいよ、クリスマスイベントは明日だというのに二枚のチケットが余ってしまった。
客の半分以上はマスターの友人で埋まり、俺はSNSで呼びかけ客を募ったがどうしても残りの二枚が残ってしまったのだ。
「僕、呼べる人いないよ」
真木多衣良は尋常じゃないジャズに関する書物を読み漁っていた。
現在活躍しているジャズグループ、ジャズに関するブログやfacebookに動画。
最終的には音楽を題材にした少女マンガまで読んでいる。俺の部屋はその資料と本とDVDでほぼ埋め尽くされてしまった。
「お前の友達二人くらいいるだろ?探せよ」
「友達なんていないもん」
あの夢落ちで俺の取り乱した姿を見てから、真木多衣良の馴れ馴れしさが増した気がしてムカついた。
そしてなぜかその日からこいつは本格的に俺のアパートへ居候している。
「俺がプロデュースしてんだぞ。満席じゃねえとマスターの顔が立たねえだろ。こっちはもう店の準備で忙しいからお前が何とかしろ」
「えぇ、なんとかって言われても」
「んじゃ、俺は明日の開店準備あるからもう行くわ。お前は明日の夕方に来い。それまでにチケット捌いておけよ」
アパートを出ると、どうも足が軽い。鼻歌混じりで駅へ向かう。
そうか。俺なりに明日が待ち遠しくてワクワクしているんだと気付いて笑えてきた。
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