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第5話 Christmas Eve Jazz session

「おい、そろそろ出番だぞ」 「うん」 振り返るとそこにはネクタイをきつく締め、シチサン分けした真木多衣良が緊張した面持ちで立っていた。 「ぶはは、お前何だよそれ、どこに就職活動しに行くつもりだ」 「やっぱり変?もうこういうのって僕どうしたらいいかわかんないんだよ」  俺は真木多衣良の頭をクシャクシャと崩した。  「なにすんの」  こいつの綺麗なツラを利用しない手はない。 客層は半分以上が女性だ。 バンドなんて大抵ビジュアル重視なんだよ。 俺は真木多衣良のダサいネクタイを外し、第一ボタンを開けた。 袖を少しだけまくり上げ腕を出させ、靴下を脱がせ、くるぶしを見せた。 崩れた頭は天然パーマのせいでうねり、くっきりした多衣良の栗色の瞳を少しだけ隠した。 これだけで十七歳のこいつは十分に色っぽい。 「俺のペン先舐めて興奮した時を思い出せよ」  緊張する真木多衣良の気持ちをほぐすように俺は耳元で囁いた。 一階からは拍手が鳴っている。 マスター達が音合わせを始めたようだ。 「こ、興奮なんかしてないし」 「俺は昨日から多衣良のピアノに興奮しまくりだ」  真木多衣良は目を丸くして驚いていた。 近くで見ても本当に女みたいな顔をしているな。   あ、こいついけるな。   肩にポンと手を置き俺は背中を押した。 「行ってこいよ。めちゃくちゃ気持ちいいぞ」  そう言って俺は多衣良にウィンクした。

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