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第20話
『あれ、麻生さんは?』
昼間。珍しく婦人組の三人と連んで祭りに来ていた山口に、何気なく声を掛けた。
しかし、山口は僕に一切顔を合わせず、唇を引き結んだまま通り過ぎようとする。
『……えっと、ね……』
『待ってよぉ』
『ちょっと、晴菜……!』
見兼ねた婦人組が、慌てて山口と僕の間に入る。
『……早く行こ!』
何時にも増して、刺々しい態度。
その様子に婦人組は、顔を突き合わせながら困った様に笑う。
『丸山!』
背後から声を掛けられ、振り返る。
と、そこにいたのは、嫌味な程格好良く法被を着熟す窪塚。
『ちょっといいか?』
商店街アーケード入り口にある、寂れたベンチ。
自販機でスポーツドリンクを買った窪塚が、一本僕に投げて寄越す。
横並びに座ると、そこから木々に囲まれた公園が遠くに見えた。
『この前の練習日。紗栄子を一人で帰したんだって?』
『……』
『山口から事情は聞いた。……でも何で、誰も追い掛けてやらなかったんだよ』
眉間に皺を寄せ、悔しそうに奥歯を噛み締める窪塚。
ペットボトルのキャップを外し、ゴクゴクと一気に半分近くまで飲む。
『……アイツ、泥だらけで帰って来たんだってよ。……服を破られて。擦り傷だらけで』
『──え、』
麻生さんが……襲われた……?
暴漢に……?
あの、通り魔事件の犯人に……?!
『事件があったばっかだってのに。俺ら、危機感全然無かったよな』
『……』
『凄ぇ、後悔してる。
何であの日、行ってやれなかったのかって……』
『……』
後悔……
それなら、俺もだ。
何であの時、足が竦んでしまったんだろう。
麻生さんが僕をどう思おうが……そんなの、関係ないのに──!!
『二人のせいじゃないよ』
いつの間にいたんだろう。自販機の前に立ち、ドリンクを買う千明先輩が、僕と窪塚に向かってそう言い放つ。
『立ち聞きしたみたいな感じになって、悪い』
『……』
『あの日。練習の途中で抜けたんだ。見学だけしていた転校生がいただろ。一人で帰るのは危険だと思って、追い掛けたんだ』
……ああ。
それで練習終わり、長田先輩しかいなかったのか。
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