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第24話

もし、間違った勇気を持ち続けていたとしたら。 白川の挑発に乗せられるまま、犯してしまったかもしれない。 「……」 最後に掴んだ、白川の細い手首の感触が思い出され、手のひらがじりじりと痺れる。 『……アイツ、泥だらけで帰って来たんだってよ。……服を破られて。擦り傷だらけで』 ──ふと、窪塚の言葉が脳裏を過る。 「……それじゃあ……」 麻生さんは……無事だった、って事……? 「うん。……だから、身代わりになったんだって……」 口角を緩く持ち上げた白川が、首筋をぽりぽりと掻く。 「……」 ……身代わり…… 白川が、身代わりに。 絶望で止まりかけていた思考が、ゆっくりと動き出す。 麻生さんが暴漢に狙われた。 けど、無事だった。 それは、白川が身代わりとなって……犯人に身体を差し出したから。 「……」 でも、何だろう。この釈然としない感覚は。 「……なぁ」 「……」 「お前、どうやって……逃げた、んだ……?」 ──そうだ。 口にしてから気付く。このモヤモヤとした違和感は、このせいだ。 恐らく犯人は、必死に逃げ惑う麻生さんを執拗に追いかけ回していた筈だ。 その獲物をみすみす逃し、身代わりを提案する白川で手を打とうなんて、思うのだろうか。 例え犯人が、白川にターゲットを移したとしても……顔を見られている以上、生きては帰さない筈。 隣町でターゲットにされた、同い年の少女のように── 「……」 手を止めた白川が、僕の様子をじっと見つめる。 窺うように。その薄灰色の瞳で。 「……なんで、殺されなかったんだ」 違和感なら、他にもある。 想像を絶する程の怖い目に遭って、必死の思いで逃げただろうに。 どうして麻生さんとは違って、呑気にお祭りなんかに参加できたのだろうか。

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