59 / 71
第59話
「最初は俺も、罪の意識から幻覚でも見ちまったのかと思っていたけどよォ。……さっきそこの先生に、溝口とおんなじ事言ってたって事は──そうじゃあねぇ、って事だよなァ」
「……」
厭らしい目付き。
ギラギラとしていて……僕の心を容赦なく揺さぶり、強引に思い通りの言葉を吐かせようとする、嫌な眼───
「お前……本当は一体、『誰』と居たんだ」
『──そろそろ、本当の事を話してくれないかな、君』
『真面目に答えないと、君が疑われる事になるんだよ』
呆れ顔で溜め息をつく、二人組の警察官。
パトカーの後部座席に座る僕に詰め寄り、冷徹な言葉を浴びせ、容赦なく心を抉る。
『……つまり、君は……白川光音──いや、黒川光と一緒に、例の小屋へ入ったというんだな?』
『そんな与太話はよせ。……犯人を庇った所で、君には何の得にもならないんだよ』
精密検査を受けた後、心療内科医立ち合いのもと行われた、事情聴取。
僕の話を半分呆れ顔で聞き流していた二人組の刑事が、溜め息をつきながら必死で笑顔を取り繕う。
………同じだ。
不可解なものは、都合の良い方へと勝手に解釈され、捻じ曲げられる。
僕がどんなに真実を訴えたとしても、現実離れした話には、何の証拠にもならず──簡単に揉み消されてしまう。
「世の中には、同じ顔の人間が三人いる……なんて都市伝説や、黄泉がえり、なんていうスピリチュアル的な話はあるが。……俺は、そんな類のものを求めてんじゃねぇんだよ」
「……」
「ただ……真実 を、知りてぇだけた」
……そ、んなの……
そんなの、僕だって知りたい。
おかしな事を言ってるのは、解ってる。
到底有り得ない事だって。
だけど……これが僕の真実。僕が体験した、ありのままの事実なんだよ……
正直に話した所で、信じて貰えないなら……
一体何が本当なのか──誰か、教えてよ。
ともだちにシェアしよう!