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第59話

「最初は俺も、罪の意識から幻覚でも見ちまったのかと思っていたけどよォ。……さっきそこの先生に、溝口とおんなじ事言ってたって事は──そうじゃあねぇ、って事だよなァ」 「……」 厭らしい目付き。 ギラギラとしていて……僕の心を容赦なく揺さぶり、強引に思い通りの言葉を吐かせようとする、嫌な眼─── 「お前……本当は一体、『誰』と居たんだ」 『──そろそろ、本当の事を話してくれないかな、君』 『真面目に答えないと、君が疑われる事になるんだよ』 呆れ顔で溜め息をつく、二人組の警察官。 パトカーの後部座席に座る僕に詰め寄り、冷徹な言葉を浴びせ、容赦なく心を抉る。 『……つまり、君は……白川光音──いや、黒川光と一緒に、例の小屋へ入ったというんだな?』 『そんな与太話はよせ。……犯人を庇った所で、君には何の得にもならないんだよ』 精密検査を受けた後、心療内科医立ち合いのもと行われた、事情聴取。 僕の話を半分呆れ顔で聞き流していた二人組の刑事が、溜め息をつきながら必死で笑顔を取り繕う。 ………同じだ。 不可解なものは、都合の良い方へと勝手に解釈され、捻じ曲げられる。 僕がどんなに真実を訴えたとしても、現実離れした話には、何の証拠にもならず──簡単に揉み消されてしまう。 「世の中には、同じ顔の人間が三人いる……なんて都市伝説や、黄泉がえり、なんていうスピリチュアル的な話はあるが。……俺は、そんな類のものを求めてんじゃねぇんだよ」 「……」 「ただ……真実(リアル)を、知りてぇだけた」 ……そ、んなの…… そんなの、僕だって知りたい。 おかしな事を言ってるのは、解ってる。 到底有り得ない事だって。 だけど……これが僕の真実。僕が体験した、ありのままの事実なんだよ…… 正直に話した所で、信じて貰えないなら…… 一体何が本当なのか──誰か、教えてよ。

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