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しつこい
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「いいじゃん。どうせ暑さなんか気にならなくなるよ。」
「暑いと倍疲れるやんか。」
「ねーぇー、明日休みなんだしいーじゃん。後処理も明日のご飯もおれやるからさぁ!」
「いーやーやー。」
ゆすゆすと俺の体をゆすってくるこいつは最近やっと主役の座を手に入れた若手声優。
かわいらしい声でおねだりしてくる理由が
「真夏のエアコンのない閉め切った部屋でセックスがしたい」
やなんて、あほらしくて臍でお茶が沸くどころかカップ麺作れるわ。
・・・意味わからんな。
「ねーえー、康太ぁ、おーねーがーいー。」
「やっかましいやっちゃなぁ、諦めろや、しつこい男は嫌われるぞ。」
まぁ、ほんまにしつこいくらいで嫌いになるんやったらとっくの昔に別れてるんやけども…、とそれはさておき。
「なんでぇ?そんなに汗まみれになるのいやぁ?」
「いややな。」
「俺が全部舐めてあげるからさぁ。」
「それもそれで嫌やわボケ。」
ふるりとまつげを震わせて目を伏せるその姿、世の女の子はこれで堕ちるんやろうなぁ。
でも、これはわざと。罪悪感とか、母性…この場合父性?とか庇護欲を掻き立てるためのこいつが身につけた処世術。
「捨てられた子犬攻撃にはもう引っかからんで。」
「何その作戦名、ださい。」
「やかましい。もうええからはよ寝ろや。そんで明日朝一で電気屋さん行こう。」
この暑さの中でヤりたくない理由が俺にはある。それはそれは大きな理由が。
しかし、俺もシたいにはシたいのだ。しかし、その理由があるせいで踏ん切りがつかない。
シたいのはシたいけどああなるのは絶対嫌なんよなぁ…。うぅんどうしたものか。
「康太?」
「・・・。」
「康太、ほんとに寝ちゃうの?ねえ。」
考えるついでに無視していたら俺が本気で寝てしまうとおもったんか、やや焦った悠の声が耳に入った。
そういえばこいつのおねだりをふり切って寝たことなんて今まで一度もなかったなぁ。
やってみるか…?
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