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第4話 初めてのキス
深夜、眠りに着こうとすると隼人さんは大音量のイヤフォンをつけてベッドに入った。
煩くないのかと尋ねると、僕のいびきの方が耳にまとわりつくだろうからと嫌味を言われた。
隼人さんはベッドに、その下に僕はマイナス二十度の極寒でも耐えられる本格アウトドアグッズの寝袋に包まって眠った。
電気が消えて、会話も無くなり外からも深夜の静けさが漂う中、僕はどうしようなく目が冴えてしまい全然眠くなかった。
カーテンの無い部屋の天井にどこからか車のヘッドライトが反射し、細い光は走るように流れては消えた。
それを何度か目で追い、ほどなくして「もう寝た?」と隼人さんに問いかけたが大音量のイヤフォンをしているせいか返事はなかった。
小さなため息をし、仕方なく本格的に眠りにつこうと固く目を瞑った。
体温が上がり、そのうち心地よいまどろみが全身をつつみ込む。
あと一呼吸すれば眠りにつく、その時小さな唸り声が聞こえた。
消えゆく意識に始めは何かわからなかったが、その声は次第に「ウウゥ」と振り絞るように苦さが増し、不揃いな呼吸音がヒュッと合間に漏れた。
「隼人さん?」
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