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第4話 初めてのキス

 僕は寝袋のチャックを開け、体を起こし、隼人さんのベッドを覗き込んだ。  隼人さんは横向きに背中を丸めながらこれでもかというほど歯を食いしばり苦しそうに息をしていた。 時折その隙間から唸り声が漏れ、耳元のイヤフォンを掻き毟るように力なく手を動かす。 「やっぱりイヤフォンうるさいんじゃないのかな」そう思い、そっと耳元にあるイヤフォンを外そうと左手を伸ばす、人差し指が耳たぶに触れた瞬間、顔が一瞬ピクリと引き攣り、隼人さんの空回りする右手が僕の左手ごと耳を抑える様に押し付けられた。 「わっ、隼人さん?」  てっきり起きたのだと思い、声を出した。 けれど瞼は眉間に皺が寄るほど固く閉ざされていて、僕の左手は汗ばんだ隼人さんの右手で耳を塞ぐようにぐいぐいと押し当てられた。 喰いしばった口元は小刻みに震え、冬になるのに首筋にはうっすら汗を掻いていた。 僕は動揺して、押さえつけられるまま身動きが取れずにいた。 呼吸の仕方が変だ。 僕は突発的な発作かと思い、起こそうかどうか迷っているとまた唸り声が漏れた。 どこからかの車のライトが反射して一瞬、部屋が明るくなる。 見ると噛んでいる下唇が白くなり、その縁が真っ赤になって今にも血が吹き出しそうなくらい食いしばっていた。

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