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第6話 イタズラ
「や、やめてください!消してくださいよ」
慌てふためきパソコンを閉じようとする僕を制して隼人さんは馬鹿にする素振り一つせず真顔で続ける。
「しかしこれってお前の魅力を一切殺してるって感じだな」
「えっ」
「俺がショパンを聞いたときは学ラン美青年っていうより、大人の男って感じだったけどな。こんな物足りなそうな顔して。お前って中身は清潔感のある坊ちゃんだけど、外見とのギャップがあるからもっと健康的な色気を出してもいやらしくなくていいと思うんだよな」
僕は動きが止まり、ポカンと口を開ける。
隼人さんは意外にも僕のことちゃんと見てくれてる。
僕は隼人さんのペンの矛先にある唇を見る。
触りたい。
湿った唇にまたキスしたい。
するとそのペンは僕の口元に向けられコツンと歯に当たった。
「童貞くんに色気は無理か」
僕は何やら完全にいやらしい気持ちになってしまった。
ビールのせいだろうか。ベッドの上から僕を見下ろすその視線から目を離したくない。
できるならそのままずっと僕を見ていて欲しい。
切れ目の一重で日本人らしい真っ黒な瞳。
その薄い口の奥にあるヌルヌルした舌を触りたい。
差し出されたペンを根元からペロリとなぞった。
目線はそのままに。いやらしく首を傾げて。あの時キスしたみたく。
トロトロの唾液を含ませて。
「な、何してんだよ。酔っ払ってんのか?」
隼人さんが初めて僕にたじろいだ。
いつも余裕のある澄ました顔が動揺している。
たまらない。
「童貞を馬鹿にするからだ」
冗談で済ませようと僕は必死で笑った。
鎖骨は痒くないが、下半身が反応して僕は立ち上がれない。
僕は残ったビールを飲み干して、早めに寝ることにした。
テレビもないこの部屋には隼人さんのパソコンキーを叩く音だけが響く。
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