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第9話 Christmas Eve Jazz session
「そうか」
「母さんと僕、どっちが先にプロになれるか見ててよ」
「ふふ、まるでライバルだな」
小さい頃からピアノとそれを教えてくれる母さんが僕の世界の全てだった。
今は、ピアノを通してたくさんのものを見たいと心から思う。
「その頃には父さんも定年でしょ?まあ、まだ母さんとヨリを戻す気があるならその時は協力するよ」
父さんは「参ったな」と照れ臭そうに帽子を深くかぶり直した。
否定しないところを見るとまだ未練タラタラのようだ。
「多衣良」
駅に着くと、見送る僕に振り返って言った。
「人生は選択だ。どんな道に進もうと私はお前を応援しているからな」
父さんの、もしかしたら初めて父親らしい台詞に僕はこんなにも頼もしく、力強く響くものなのかと驚いた。
「うん」
「もちろん、母さんのことも応援しているけどな」
父さんが照れるように言うと顔合わせて笑った。
父の母に対する気持ちが離れていなかったことが息子の僕としては心から嬉しかった。
明日からの慣れない父子生活がこれから少しずつ変わっていくだろう。
駅に流れるクリスマスソングに乗って僕の気持ちがどんどん軽くなるのがわかった。
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