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第10話 告白

「隼人さん、本当にありがとうございました。僕……母親のいるドイツに行ってきます。そこで、ピアノをつづ…」  ガチャとドアが開いた。 開いたドアは勢い余って僕のつま先にガンと音を立ててぶつかる。 僕は無意識にドアの隙間に手をかけ、思いっきり引っ張った。 首にタオルをかけた風呂上がりと思われる隼人さんが半袖Tシャツ姿でドアノブを引く状態で立っていた。 目が合うと、無我夢中で僕は隼人さんを抱きしめた。 隼人さんが泣いていた。 「冷て……」  隼人さんが僕の腕の中で小さく呟く。 その声が震えている。 冷えた指先で感覚が鈍っていたが、隼人さんの冷えきった腕を触り、随分前からこのドアの前にいたことが分かる。 「隼人さん、僕……」 「お前さ、よく考えろよ」  隼人さんは抱きしめる僕の両腕を振り払った。 弾みで頬に涙がつたった。 「俺はお前の心拍数まで数えられるんだよ。俺といるなんて、中途半端に嘘もつけねえぞ」 「僕は隼人さんに嘘なんかつかないよ」  僕は以前マスターから聞いたカミーラの話を思い出した。 知らぬ間に耳に入る他人の罪に隼人さんは何度聞かぬ振りをしてきたんだろう。 知らなくてもいい真実に何度打ちのめされてきたのだろう。 「お前と、お前を取り巻く環境が、俺には全部筒抜けなんだよ。したくもないのに常にお前は俺から盗聴されるようになるんだぞ。キモいだろ普通に」

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