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第10話 告白
人を避け、発作にも似た寝苦しい夜をこの人は何度過ごして来たのだろう。
涙を流し、怒鳴る隼人さんの声に不謹慎に興奮してしまう。
十個も年上の隼人さんの距離に間違いなく僕の声が響いている。
そう思うと愛おしくて仕方がない。
「知ってる。やっぱりそれでも僕は隼人さんと一緒にいたいよ」
僕は隼人さんの手首を優しく掴んだ。
少しの沈黙に隼人さんが息を整える。
徐々にいつもの隼人さんに戻って行くみたいだ。
「お前、本当にバカだな」
自分の胸ぐらのシャツを引っ張り、隼人さんは涙を拭う。僕は改めて息を飲んで聞く。
「隼人さんの……出来れば気持ちを聞きたい、です」
それを聞いた隼人さんは「若いなぁ」と小さくつぶやいた。
大きくため息をすると頭が?げるくらい下を向き、しばらく沈黙した。
そして、
「お前の……ピアノを弾いてる姿は好きだ」
絞り出すように声を出す、暗くてわからないが耳まで赤くなっているような、気がする。
僕は隼人さんを力一杯抱きしめ、促されるままキスをした。
舌が欲しくなって唇を開くと応えるように隼人さんの舌が入って来て、互いに貪るように吸い付いた。
掴んだはずの腕がいつの間にか掴まれていて、部屋に引き寄せられた。
ここが玄関だということも忘れていて、僕は慌てて靴を脱いだ。
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