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第71話
だから地獄で再び会い見えたなら、今度こそ、伝えよう。
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あっけない別れだな、と思った。ここまでの道中が異様に長く感じられる。
これであの男のみならず、伊織とも永遠の別れだ。縁はすっぱりと断ち切られた。おそらく、もう出会うことはないだろう。どこかで顔を合わせたとしても、おそらく互いに知らぬ者同士を演じるのだ。なぜかそれが自然な気がした。
いつの間にだろうか、卓に蕎麦切りが乗っていた。佐平に夢中になっている内に運ばれてきたのだろう竜巳は箸を持って、蕎麦に手を伸ばそうとして――やめた。
その時、赤ら顔をにやけさせた佐平がのそりと立ち上がった。
「おっと、これはいかん。大事な約束を忘れていた」
竜巳は慌てて身を竦め、声に耳を澄ました。
「用だと? また馴染みの女のところか」
「今度は小僧かもしれんな」
仲間の二人がはやし立てると、佐平は額を押さえて軽快に笑った。ずいぶん色事に目のない男だとは聞いていたが、ここまでとは。怒りを忘れて明てしまいそうになる。
「はは、悟られてしまったか。まあ野郎も悪くはないが、やはり女の方がよい。……おい、手土産を用意してくれ」
――このまま、一人夜道を帰るつもりだろうか。
竜巳ははっと気づくと同時に、思案した。
この町に馴染んだところで、いつあの男を殺すことができるのだろう。これは千載一遇の好機ではないのだろうか、と。
そう考えに至ったところで、佐平が店の女から包みを受け取り、踵を返した。出口に向かっていく佐平を見やりながら、勘定には十分な金を卓に置き、不自然な動作にならぬよう草履を履く。
ちらり、連れの男二人にも気取られていないのを確認して――竜巳は佐平を追って、店を出た。
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愛していた、と。
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