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第28話

「き、急に何すっ……ふ、う……!」 卑猥な音を立てて顔が離れていく。 輝夜は竜巳に覆いかぶさったったまま、にや、と笑った。 「なに、仕置きを忘れていていたと思ってな」 「し、仕置き……?」 「……外に出るな、という誓いを勝手に破った罰を、な」 輝夜はそう妖艶に笑い、竜巳の帯に手をかけた。 「うわ、待て、なんであんたはいっつも急に盛るんだよ……!」 「お前ぐらいの年で盛らぬお前の方がおかしい」 「――……っ」  ――これは仕置きだ。師弟関係を維持するための必要な行為だ。  ふとした瞬間に思う。本当は女の柔らかい身体がいいのだろうと。以前、女ものの着物まで仕入れてきたのはそういうことだろう。 竜巳は悔やんでいた。何故かはわからない。自分が女であれば、などと無意味なことを考えてしまう。 女だったなら――輝夜は己を娶ってくれたのだろうか。 ――こんなことを考えてどうするんだ。  結局己は男だ。それが変わることなど無い。馬鹿な考えはよそうとかぶりを振ったところで、じいっとこちらを見ていた輝夜と視線が交差した。 「……今日は変わったやり方をしてみるか」  輝夜は竜巳の手を引いて抱き起すと、そのまま立ち上がらせた。 「そこに立て」 「……?」  輝夜が示したのはむき出しになった一本の柱の前であった。おとなしく傍に立つと、輝夜はすっと目を細め、放られていた麻紐を手に近づいてきた。 「俺はひどくない抱き方というものを知らなくてなあ」 「……へ? ちょっ」  くすりと笑った輝夜が、後ろ手に竜巳の手を縛った。余った部分を柱に巻き、竜巳の手と柱を括り付けてしまう。 「こ、輝夜、これ」 「目を閉じろ」 「は? ……ちょっ」  反射的に従えば、目元を布で覆われてしまった。手拭いを頭の後ろで縛った輝夜は、自分より頭一つ分ほど背の低い少年を極悪人のような形相で見下ろした。 「輝夜、なんだよこれ、見えな……っ」  慌てる竜巳の袷に手を差し入れ、柔らかな胸の突起を弄ぶ。竜巳は直に触れられる悦びにびくりと震えた。  輝夜の顔が見えないことでより官能が引き出される。怖れがないわけではなかったが、次に何をされてしまうのか、という淡い期待が勝った。

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