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第29話
「なんだ、随分とおとなしい。ここも萎れてしまっている。怯えているのか」
「っ……!」
そう呟く輝夜の唇が執拗に肌に赤い痕を残して下りていく。骨ばった手が竜巳のものを掴んだ。いやいやをするように首を横にふれば、ふふ、と苦笑が落ちてくる。
「な、なあ、これ、ちょっと怖い」
「そうか? いつものようにそのうち好くなる」
「で、も……ひっ!」
萎えた竜巳のものを口に含み、根元を扱きながら転がすように舐める。与えられたことのない快楽に腰から崩れ落ちてしまいそうになった。不格好に足が震える。
視界は真っ暗で何をされているのか分からず、竜巳は悲鳴にも似た声で喘いだ。
「そ、れ、だめ……!」
「おや、もう反り立った。本当に敏感な身体をしている」
「っぁあ――……!」
ちゅ、と音を立てて先端を吸われる。今にも吐精してしまいそうな快感が全身を襲った。
「ふふ……そんなにいいか」
「ぁ、ちが、っ……!」
輝夜の手が竜巳の中心を掴み、上下にゆるく扱く。切ない息を漏らした竜巳は、無意識のうちにその手の動きに合わせて腰を揺らした。
「どれ、そろそろ俺も楽しませてもらおう」
先ほどまで前を弄っていた手が、その奥、閉じられた蕾の方へ動く。竜巳はそれを受け入れるようにして足を開いた。輝夜は意外そうに笑う。
「なんだ、その気になってきたじゃないか」
「っ、ぁ」
輝夜は片足を抱え上げると、先端の先走りを救い取り、後孔に塗り付けた。ひだを伸ばすようになぞられれば、快楽への期待が膨らみあがる。
手間をかけぬようにと、全身から力を抜く。早くその強直に貫かれ、揺さぶられたかった。輝夜はその様子を見て笑みを深くする。
やがて押し入って来る指の感覚に、くらりと眩暈がした。情交に慣れた身体はひどく従順で、早く早くとせがむ様に、男の指を迎え入れ、締め付ける。
「う、あ……!」
「締め付けるにはまだ早いぞ、ほら」
「ん、ぐっ」
浅くにある弱いところをぐりぐりと押しやられ、身体が痙攣する。腰が揺れるのを抑えきれず、だらしなく喘ぐ口からつう、と唾液が滴った。
「中もこんなに熟(う)れて。そんなに俺が欲しいか」
「ちが、ぁっ」
絶対に認めてやるつもりはなかったが、身体はいやに正直だった。触れられればふれられただけ反応してしまう。暗に自分がみだらであると証明しているようなものだ。輝夜は竜巳のその様子さえ楽しんでいるようだった。
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