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第40話
真面目くさった表情で揶揄う様子も無く言われてしまえば、竜巳は俯く他なかった。手放しで褒められてしまえば、否定する気も萎んでしまう。
「事実だ。似合っている。少なくとも、その辺の小娘に比べれば十分綺麗だぞ」
「綺麗? どっちかっていうと可愛らしいってとこじゃねえの? あ~あ、俺の嫁さんもこれぐらい華奢だったらなあ……」
「あ?」
「うわそんな顔で睨むなよ輝夜」
「ははは、お初ちゃんに言っといてやるよ、新しい旦那探しとけってさ」
「待ってくれ、初には言うのはやめてくれ、殺される。同じ釜の飯食って修行に励んだ仲だろ風早の兄貴……!」
風早が煩いと一括し、縋りつこうとした伊織を蹴とばす。伊織は大げさにうめいていた。
「さ、せっかく似合ってるんだ、もっと着飾らねえとな。ほら、髪を結うからそこに座ってくれ」
「まだやるのか⁉」
思わず叫ぶと、輝夜がくく、と声を上げて笑った。
竜巳は納得のいかぬまま、風早の着せ替え人形にされたのだった。
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