50 / 83
第50話
竜巳は慌てて言い繕った。
「あんたが子供の頃の失敗のせいで村八分にされてるって話だ。でも、その失敗の詳しいところは教えてくれなかった。……あんたに直接聞けってさ」
「……あの阿呆」
輝夜は大きく嘆息して脱力した。その憔悴した様子に、そんなにも話したくない事件であったのか、と疑問が頭をもたげて引っ込んだ。
言葉を選び、輝夜に対峙する。
「……伊織は聞くべきだって言ってたけど、俺は別に、あんたが話したくないなら聞かないよ」
輝夜はちらりと竜巳を見やって、呆れたようにかぶりを振った。
「気になるのだろ、顔に書いてあるぞ。まったくもって分かりやすい、素直に言えばいいものを余計な気など使って」
「えっ、そんな顔してたか?」
「ああ、していた」
前に身を乗り出すと、ぺしっと額を叩かれた。頭を引っ込めて輝夜の様子を伺う。何かを思案しているようであったが、怒りの色は見えない。
「……だってあんた、俺のせいで隠れ里を滅ぼしかけた、って聞いたもんだから」
「!」
眉根を寄せた輝夜の瞳が囲炉裏の炎を受けて赤く輝く。爛々(らんらん)と輝く紅玉のようなそれを見つめていると、輝夜はばつの悪そうな顔をして竜巳から視線を逸らした。
「……そうだな、しかしあれはお前には関係のないこと。ただの俺の過ちだ」
「……過ち」
竜巳が復唱すると、輝夜は静かに頷いた。それからぽつりと語り出す。
ともだちにシェアしよう!