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第50話

 竜巳は慌てて言い繕った。 「あんたが子供の頃の失敗のせいで村八分にされてるって話だ。でも、その失敗の詳しいところは教えてくれなかった。……あんたに直接聞けってさ」 「……あの阿呆」 輝夜は大きく嘆息して脱力した。その憔悴した様子に、そんなにも話したくない事件であったのか、と疑問が頭をもたげて引っ込んだ。 言葉を選び、輝夜に対峙する。 「……伊織は聞くべきだって言ってたけど、俺は別に、あんたが話したくないなら聞かないよ」  輝夜はちらりと竜巳を見やって、呆れたようにかぶりを振った。 「気になるのだろ、顔に書いてあるぞ。まったくもって分かりやすい、素直に言えばいいものを余計な気など使って」 「えっ、そんな顔してたか?」 「ああ、していた」  前に身を乗り出すと、ぺしっと額を叩かれた。頭を引っ込めて輝夜の様子を伺う。何かを思案しているようであったが、怒りの色は見えない。 「……だってあんた、俺のせいで隠れ里を滅ぼしかけた、って聞いたもんだから」 「!」  眉根を寄せた輝夜の瞳が囲炉裏の炎を受けて赤く輝く。爛々(らんらん)と輝く紅玉のようなそれを見つめていると、輝夜はばつの悪そうな顔をして竜巳から視線を逸らした。 「……そうだな、しかしあれはお前には関係のないこと。ただの俺の過ちだ」 「……過ち」  竜巳が復唱すると、輝夜は静かに頷いた。それからぽつりと語り出す。

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